福島相双復興推進機構とソフトバンクは、福島県の海岸線におけるドローン航路の整備を想定した飛行実証を行い、拠点運用の有用性や、社会実装に向けた運用面の課題を確認したと発表。同実証は、日立製作所、南相馬市、東北電力原町火力発電所、相馬双葉漁協の協力のもと、南相馬市の海岸線付近で行われた。

  • ドローン航路実証のようす

    ドローン航路実証の様子

福島相双復興推進機構(相双機構)は、福島相双地域(東日本大震災と原発事故に伴う避難指示などの対象地域となった、南相馬市や双葉町を含む福島県内12市町村)での労働人口減少などの課題解決に向け、ドローンを活用した物流網の構築や港湾施設の点検省力化・効率化を目指し、海岸線におけるドローン航路整備に取り組んでいる。

今回の実証では、相双機構とソフトバンク、日立製作所が協力。1カ所の離着陸場を拠点として、ドローンの多用途運用を想定した飛行実証を海岸線ルートで実施した。具体的には、風力発電所や太陽光パネル、海岸、河川などの巡視、海洋監視、物資配送など6つの用途を想定し、目視外の自動飛行による検証を行った。

さらに、海岸線での運航に必要な機体や環境の要件、拠点運用における離着陸時間やメンテナンス効率、運用スケジュールの最適化、上空からの撮影に適した飛行方法などについても実証を進めた。その結果、1カ所の離着陸場を拠点とした多用途対応のスムーズな飛行を確認し、拠点運用の有効性も確認。社会実装に向けた課題としては、ドローンの稼働時間の把握や関係者との調整の必要性を確認したとしている。

政府は、2024年6月に策定した「デジタルライフライン全国総合整備計画」のもと、全国でドローン航路の整備を進行中。政府のワーキンググループでは、全国線航路と地方線航路の2つの整備方針を示しており、相双機構は福島で地方線航路の実現に向けた取り組みを進めている。

海岸線でのドローン活用を多用途に広げることで多様なニーズに対応できるほか、一事業者のみでは負担が大きい機体の費用や保守・点検の労力、操縦スキル維持のための訓練などを拠点運営事業者が一元化して対応することで、平時・災害時を問わず迅速にドローンを運用できる環境づくりに寄与するとしている。

相双機構とソフトバンクは、福島での実証を皮切りに、ドローンを安全・安心かつ効率的に運航するための航路整備やシステム構築、商用利用を見据えた社会実装を推進する方針だ。

なお各社の役割として、相双機構はドローン航路の整備を想定した海岸線における運航の有用性検証に関する諸支援、および地域におけるドローン利活用ニーズの探索を担い、ソフトバンクが実証の取りまとめとドローン運航、日立製作所がドローン運航のオペレーション支援を担当した。