ispaceは4月10日、月面探査ミッションで越夜を成功させるための技術を、同社の米国法人と宇宙用原子力発電システムを手がける米企業で共同開発するために、戦略的提携を行うと発表。早ければ2027年にも、その有効性を月面で検証するミッションの実施をめざす。

  • (左から)Zeno Power CEO兼共同創業者のタイラー・バーンステイン氏(左)と、ispace-U.S. CEOのエリザベス・クリスト氏

米国最大規模の宇宙カンファレンス「第40回Space Symposium」において、ispaceの米国法人であるispace technologies U.S.と、商業用放射性同位元素発電システムを開発する米企業・Zeno Power Systemsが、今回の戦略的提携にかかる覚書を締結。

具体的には、Zeno Powerの放射性同位体電源(RPS:Radioisotope Power System)を将来の月面ミッションに統合することを共同で検討する。太陽光パネルとバッテリーによる電力供給とは異なり、RPSでは太陽光の有無にかかわらず、連続的かつ信頼性の高い熱制御と電力供給が行える。ispaceでは「『月の夜を生き延びる』機能を実現する上で理想的な技術だ」と説明している。

Zeno Powerは商業用RPSを開発する企業で、2018年に設立され、ワシントンD.C.とワシントン州シアトルに拠点を置いている。コンパクトなデバイスで深海から深宇宙まで、最も過酷かつ遠隔の環境で継続的にエネルギーを供給できるとしており、NASAおよび国防総省と総額6,000万米ドル相当の契約を締結。2026年までに初期のRPSを顧客向けに実証する予定だ。

月面では温度がマイナス173度まで下がり、太陽光がまったく届かない時期が約2週間訪れる。このため、太陽光発電のみで長期間の運用や活動維持は困難とされる。米航空宇宙局(NASA)では「越夜の克服」を、人類が月面で持続的に活動していくための最重要技術的課題と位置付けている。