
政府が通常国会への提出を目指す年金制度改革法案について、自民党内の審査手続きが遅れている。
国民負担増を伴う内容が含まれているため、今夏の参院選への悪影響を懸念する一部幹部からは法案の国会提出の先送りを求める声も根強い。法案提出の遅れに野党は猛反発しており、石破茂首相は党内議論の加速を指示。3月下旬にようやく党内議論を再開させて4月中の国会提出を目指すが、「少数与党で野党の協力も見通せない中、今国会での成立は絶望的ではないか」(閣僚経験者)との声が漏れる。
年金法案は、全ての人が受け取る基礎年金の給付水準の底上げ策とパート労働者への厚生年金の適用拡大が柱。今国会の「重要広範議案」とすることで与野党が合意している。ただ、基礎年金の底上げ策は厚生年金の一時的な受給額低下や将来的な増税につながる可能性があり、厚生年金の適用拡大は企業の保険料負担増を伴う。
自民党内では「基礎年金底上げ策は厚生年金の積立金を財源に用いるため、厚生年金保険料の流用ではないか」「自民党は増税を考えていると思われ、参院選で大敗してしまう。与野党で抜本改革を議論すべきだ」といった反対意見が噴出している。
これに対し、野党からは自民が参院選での「争点隠し」を狙っているとして、「法案を国会に提出して議論すべきだ」などとけん制する発言が出ている。立憲民主党は、基礎年金の底上げ策など法案の基本的方向性については異論がないという。法案が提出されれば、国会審議を通じて修正を求める構えだ。