TDCソフトは3月25日、埼玉スタジアム2002(さいたま市緑区)で開催されたサッカー日本代表のFIFAワールドカップ2026 アジア最終予選サウジアラビア代表戦の観戦イベント「新CMをリアルタイムで見ながらFIFAワールドカップ日本代表をみんなで応援しちゃおうよイベント」を社内で行った。本稿では、その模様をお伝えする。なお、同社はテレビ朝日系列で放送された同試合の番組スポンサーの一翼を担っている

“帰りたくなる”、TDCソフトのオフィス

まずは、観戦イベントを行ったオフィスについて以前、取材した記事にて詳細は譲るが、おさらいの意味も込めて改めて簡易的に紹介したい。同社では2023年10月に九段会館テラス(東京都千代田区)に本社機能を移転した。単なる移転ではなく、同社としては肝いりの移転でもあった。

移転前の2022年に創業60周年を迎え、新たな一歩を刻むオフィスとして次世代型システムインテグレーション事業を支えるワークプレイス戦略の一環として「Smart Work構想」を掲げた。コンセプトは「Re:Place」。

これは変化の速いビジネス環境の中、常に社員にとって快適かつコミュニケーションが取りやすい環境に変化(リプレース)をしていくことで、高い生産性を発揮し続けることを目的としている。

九段会館テラスの4階~5階にオフィスを整備し、レイアウトは「帰社してきた社員に対する本社の体験価値の最大化」「交流ポイントの構築」「景観の活用」の3つをポイントにした。

オフィスの目玉でもある5階には、プレゼンテーション(研修・イベント)エリアを中心にフリーアドレスエリア、コラボレーションカフェ、執務用グループアドレスエリア、フォーカスエリアがシンメトリーに配置。ちなみにこのプレゼンテーションエリアはイベントなどがない場合は、普段フリーアドレスエリアとして社員が自由に業務に使っている。

  • プレゼンテーションエリア(1)

    プレゼンテーションエリア(1)

  • プレゼンテーションエリア(2)

    プレゼンテーションエリア(2)

常駐する顧客先から帰社してきた社員が自然とフロア内を回遊することで交流促進を図り、景観と交流を確保するためフロア内の導線を分断するような壁はなくし、解放感があるレイアウトとしている。

また、業務のみならず、さまざまな用途で活用できる多様なゾーニングがあり、長時間作業を行うエリアは気候の影響を受けやすい窓際から距離を取り、快適な作業スペースを確保している。

TDCソフトがTVCMを制作した意図とは?

今回、観戦イベントを行ったのは言わずもがなプレゼンテーションエリアだ。ここまでオフィスの話を続けているが、そもそも観戦イベントを行った理由は同社がTVCMを制作し、そのCMが試合中に流れるため、社員とのエンゲージメント強化の一環として実施したのだ。

  • プレゼンテーションエリア(2)

    プレゼンテーションエリア入口

イベントには、若手社員を中心に多数が参加。試合開始前の18:30からTVCM制作の中心的な役割を果たした、TDCソフト 経営企画本部 経営戦略推進部部長 兼 広報室室長(現ディレクター)の弦牧竜也氏と、同 経営企画本部 広報室の長谷美月氏の2人がCM制作の裏話を語った。

長谷氏はCMのターゲットについて「社員の皆さまに向けて作りました。もちろん、会社として認知度を上げるということもありますが、TDCソフトが頑張っている姿を社員の方に知ってもらうために制作しています」と話す。

  • TDCソフト 経営企画本部 広報室の長谷美月氏

    TDCソフト 経営企画本部 広報室の長谷美月氏

それを受けて、弦牧氏は「実は今回のCMは初めてではなく、第4弾になります。それぞれのCMでTDCソフトの社員の方が会社に対して“誇りを持ってもらいたい”ということを狙い、CMを制作しています」と返す。

  • TDCソフト 経営企画本部 経営戦略推進部部長 兼 広報室室長(現ディレクター)の弦牧竜也氏

    TDCソフト 経営企画本部 経営戦略推進部部長 兼 広報室室長(現ディレクター)の弦牧竜也氏

CM制作にあたり、キーメッセージでもある「あたりまえを書き換えろ」を軸に社員へのインタビューを行い、熟考に熟考を重ねた末にIT企業ながら「人」の思いと、仕事の姿勢にフォーカスしたストーリーとした。

そして「本質を考えろ」編として制作が決定。意図としては「言われたとおりに動くだけではなく本質を考え抜いてお客さまの課題を解決する!」というものだ。これも実際の社員のエピソードがもとになっている。

女優の桜井ユキさん、俳優の坂東龍汰さんをキャスティングしたCMは30秒Verと15秒Verに加え、メイキングがYouTubeで公開されている。

  • 30秒Ver
  • 15秒Ver
  • メイキング

また、弦牧、長谷、両氏からは会場で配布したCMの解説書も紹介された。TDCソフトとはどのような強みを持っている企業なのか、そして同社がどのような意図を持ってCM制作に臨んだのかを優しいタッチで分かりやすくマンガで表現している。また、社員の家族でも理解しやすい内容なっており、ぜひ家族の方々にも渡してほしいと広報から参加者に促していた。

  • 会場内で配布されていたTDCソフトのCM解説書

    会場内で配布されていたTDCソフトのCM解説書

エンゲージメント強化につながるイベント

事前のイベントも終わり、いよいよ観戦イベントがスタート。会場にはソフトドリンクやビールサーバ、アルコール類に加え、ホットスナックなどの軽食が用意されていた。

  • ビールサーバ

    ビールサーバ

  • 軽食も用意

    軽食も用意

  • ホットスナックは専用の機械を設置

    ホットスナックは専用の機械を設置

CMが放映されるタイミングは試合前もしくはハーフタイムの間であり、どちらで放映されるかは分からない。試合前の高揚感の中、放映されるか否か固唾をのんで見守っていたが、そのままキックオフとなった。

  • 和気あいあいと観戦を楽しむTDCソフトの社員

    和気あいあいと観戦を楽しむTDCソフトの社員

日本代表は3月20日のバーレーン代表戦を2-0のスコアで勝利し、ワールドカップ出場を手中に収めていた。一方、3大会連続7回目の本大会出場を目指すサウジアラビア代表は、3月25日まで最終予選では2勝3分2敗を記録し、勝ち点は9。2位につけるオーストラリア代表との勝ち点差はわずか1という状況であり、何としてでもアウェイでの勝ち点が必須になっていた。

試合は膠着状態のままハーフタイムを迎え、ハーフタイム中にTDCソフトの提供が伝えられた。そしてCMが流れた瞬間、社員たちのどよめきとともに歓声を上げ、拍手をしていた。

  • TDCソフトのCMが放映された瞬間に社員は歓声を上げていた

    TDCソフトのCMが放映された瞬間に社員は歓声を上げていた

試合は、キックオフから試合終了まで終始、守備を固めるサウジアラビア代表に対して、チャンスメイクは何度かあったものの結果的にはドローとなった。

イベント終了後にTDCソフトの社員にインタビューしたところ「純粋に楽しかった。普段は会社に帰ってくることは少ないですが、こうした楽しいイベントがあると帰りたくなります。こうしたことが入口となって、気軽に帰りやすくなれば良いと思います。なかなか帰ってこれない社員に対しても、久しぶりにコミュニケーションを図れるので、帰ってきなよという話ができるきっかけにもなると思います。顧客先に常駐していると、社員間のコミュニケーションが不足がちになってしまいます。そのため、今後はこうした社内イベントがあるタイミングで普段なかなかコミュニケーションが取れない同僚と関係を深めていければと思っています。イベントが多く社員のコミュニケーションが取れるようすごく配慮してくれているのがうちの会社の魅力の1つだと思っています」と話していた。

今回のイベントを通して感じたことは、普段はシステムインテグレーターという職種柄、社員間のコミュニケーションが不足し、横のつながりが希薄化しがちであるが、このようなイベントを開催することによりコミュニケーションが活性化され、ひいてはエンゲージメント強化の一助になっていた点だ。

今やどこの企業も“エンゲージメントの向上”を叫ばれているが、こうしたTVCMという施策を自社の認知度向上だけにとどめるのではなく、社員のコミュニケーションを活性化させ、エンゲージメントの底上げにも繋げているところがTDCソフトの1つのアイデアとして優れていると感じた。