
トランプ米政権は3月12日、輸入される鉄鋼とアルミニウムに対する関税措置を発動した。日本政府はこの直前、武藤容治経済産業相を米国に派遣し適用除外を直談判したが、前向きな回答を得られないまま発動日を迎えた。米国は輸入自動車や、関税や非関税障壁が高い相手国に関税を課す相互関税も導入すると表明しており、日本の産業界への打撃は避けられない。
関税措置を回避したい日本政府は米国に対し、企業による工場建設など投資による貢献を強調し続けてきた。石破茂首相がトランプ氏と会談した際も、対米直接投資を1兆ドルに引き上げると伝達し、トヨタ自動車やいすゞ自動車の新たな投資計画も披露した。
武藤氏はラトニック商務長官やグリア米通商代表部(USTR)代表らとの会談で、日本の貢献を改めて主張。液化天然ガス(LNG)の輸入拡大などでの協力についても議論し、日本を対象から外すよう求めた。
ただ、米側は国内製造業の復活や雇用の拡大などを主張するばかりで、鉄鋼やアルミに対する関税について「日本を除外するという話にはなっていない」(武藤氏)と、発動の見送りが言及されることはなかった。他の関税措置についても日本が影響を回避できるような発言は米側から得られなかった。
日本政府が最も警戒しているのが、4月に詳細が公表される25%程度の自動車関税だ。日本からの輸出に対する現行の税率は自動車が2.5%。輸出額は対米輸出全体の3割を占め、適用されれば影響は広く及ぶ。自動車業界からも「日米の経済にとって悪影響となる」など、懸念の声が上がっている。
第1次トランプ政権時には、鉄鋼とアルミに対する関税の除外を日本には認められなかった一方、自動車関税の引き上げは日米貿易交渉の末、見送られた。政府は事務方の会合を開いて粘り強く除外を求めていくが、ディール(取引)に長けたトランプ政権から譲歩を引き出せるかは不透明だ。