IHIは3月26日、航空機の空気抵抗を削減するための空力制御システムとして期待されるハイブリッド層流制御システム(HLFC)の実現に向け、ガス軸受モータを搭載した減圧装置となる真空ポンプを開発し、希薄空気における条件下で実証試験に成功したことを発表した。

  • ガス軸受真空ポンプ

    希薄空気で作動中のガス軸受真空ポンプ(出所:IHI)

航空機の空気抵抗を大幅に削減する技術として期待が集まるHLFCは、翼の表面に開いた小さな穴から空気を吸い込み、前縁部のみの吸い込みにより横流れの不安定性を効率的に抑制するとともに、翼の後方では自然層流と同様の望ましい圧力勾配を持つ設計とすることで、滑らかな層流を維持するという、翼の前縁と後方で異なる手法を組み合わせた制御システム。この制御された吸引により、翼の空気抵抗が削減され、航空機の燃費向上およびCO2排出量の削減につながるとする。

  • HLFCの大気吸い込みシステムのイメージ

    航空機に搭載されたHLFCの大気吸い込みシステムのイメージ(出所:IHI)

古くは1930年代から注目されてきたこのHLFC技術だが、飛行高度である約1万m上空の希薄空気を吸い込んで動作する、小型軽量で信頼性の高い大流量真空ポンプの実現が、大きな課題となっていたとのこと。そこで今般IHIは、航空機の運用効率を改善する技術の開発に取り組む中で、HLFCにおける長年の課題の解決に着手したという。

今回独自に開発された真空ポンプが持つ特徴について、IHIは、「ガス軸受モータ技術」「コンパクトで軽量な設計」「制御性の向上」の3点を挙げる。中でも核となるモータ技術については、ガス軸受を使用することで軸受の摩擦・摩耗を最小限に抑え、高空の過酷な条件下でも高い信頼性とメンテナンスの軽減を実現するとしている。また軽量化に向けては、最新の超高速回転機技術を採用したとのこと。加えて制御性については、希薄空気で空気浮上するガス軸受の採用により、低真空環境で効率的に動作する設計が実現されたといい、飛行中の気圧変化による影響を受けず性能が維持されるとした。

なおIHIは今回、秋田大学協力のもと、秋田大 電動化システム共同研究センターにて実証試験を実施。HLFCとしての作動を想定した10分の1気圧の条件下で、真空ポンプの実証試験に初めて成功したとする。

同社はこの新技術について、HLFC技術における長年の課題を克服したもので、航空機の燃料効率を改善しCO2排出削減に貢献するとした。また今後も、顧客の進化するニーズに応えるソリューションを提供し、新たな推進システムの開発をリードしていくとしている。