リッジアイ(Ridge-i)は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と、地球デジタルツイン研究に向けたAIを実証したと3月24日に発表。生成AIとJAXA Earth API、Google Earth Engine APIなどの外部衛星データプラットフォームを接続し、プロトタイプを作成した。
同社は、JAXAが進める試作プロジェクト「地球デジタルツイン研究に向けたAIの予備検討」の仕様に基づき、災害対策や農林水産業での衛星データ利用を想定した、対話型AI形式のプロトタイプを作成。作成したプロトタイプは、ユーザーが入力した地球環境の質問に対して適切な外部データを呼び出し、その外部データを解釈し、ユーザーに回答できるという。
生成AIには「GPT-3.5」と「GPT-4」を活用。外部データには「JAXA Earth API」「Google Earth Engine API」を使い、さらにJAXAのWebサイト「Earth-graphy」や「サテナビ」といった衛星データプラットフォームとも接続している。
プロトタイプの実行例として、同社では2つの事例を紹介。たとえば、JAXA Earth APIに「2020年1月1日の関東の地表面温度の最大値を教えて」と質問すると、「2020年1月1日の関東地方(東京を含む)の地表面温度の最大値は、約12.8度」、「GCOM-C衛星のSecond-generation imager(SGLI)によってキャプチャされた地表面温度(LST)データを解析した結果、関東地方の最高気温は約12.8度だと分かった」と回答するという。
また、Google Earth Engine APIに「2020年1月のシンガポール海域付近の様子は?」とたずねると、指定した時期の同海域付近で撮影された衛星画像を返すとのこと。
リッジアイでは、JAXAが研究中の地球デジタルツイン構想の支援にあたり、独自に提唱する『AI on TOP』という考え方に基づいた技術基盤を開発している。生成AI(LLM:大規模言語モデル)をインタフェースとした対話型のツールを提供し、衛星解析技術に詳しくない人でも簡単に、データの入手・解析ができるようにすることをめざすもので、JAXAの地球デジタルツインでは、外部のデータベース/レイクや、処理エンジンに接続できるAI on TOP基盤を構築する。
AI on TOP基盤は、プランニング機能、データインタフェース、インタフェース、処理エンジンインタフェース、解釈機能、提案機能の6つのコンポーネントを用意し、ユーザーとデータや処理エンジンをシームレスにつなげられるとする。
AI on TOPの成長においては、まずマクロデータや処理エンジンと提案型アウトプットで、特定領域での衛星データ活用活性化を実現。その後、順次領域を広げ、領域間の連携や、消費者の衛星データの活用までめざすとのこと。
JAXAでは、衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)の提言書に基づき、デジタルやグリーン分野と衛星観測の融合をめざして、地球デジタルツイン構想を研究中。デジタルツインとして必要なAI(人工知能)にかかる今後の研究計画を検討するとともに、試作プロジェクトの実施にあたり、2023年11月の一般競争入札で同社を採択したという経緯がある。