三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は業務プロセスの抜本的改革の一環として、ERPソリューション「Oracle Fusion Cloud Enterprise Resource Planning (ERP)」を導入して、会計業務の共通化に取り組んでいる。さらに、会計業務において生成AIの活用も始めている。

三井住友フィナンシャルグループ 経理業務部 部付部長/三井住友銀行 経理業務部 部付部長 山本慶氏が、日本オラクルの年次イベント「Oracle CloudWorld Tour Tokyo」で、会計業務共通化プロジェクトについて説明を行った。

  • 三井住友フィナンシャルグループ 経理業務部 部付部長/三井住友銀行 経理業務部 部付部長 山本慶氏

経理業務の75%の自動化を実現

SMBCグループでは、グループ各社で異なる経理業務プロセスで独自のシステムを運用し業務を遂行していたが、全グループ会社における業務プロセスを標準化できる単一の会計基盤を必要としていたという。

複数のERP製品を検討した結果、「Oracle Fusion Cloud Procurement」と「Oracle Fusion Cloud Enterprise Performance Management(EPM)」を含む「Oracle Fusion Cloud ERP」の導入を決定。これらのアプリケーション製品はオラクルのクラウドプラットフォーム「Oracle Cloud Infrastructure」上で稼働している。

山本氏は、SMBCグループの経理業務の改革について、「テクノロジーを活用して、エンド・ツー・エンドで改革を行い、競争力やエンゲージメント向上につなげることを目指している。インテリジェントオートメーションからエージェンティックオートメーションにシフトする」と説明した。

具体的には、請求書処理から経理まで75%の自動化が実現された。山本氏は「ポイントはテクノロジーを活用して人手の作業を自動化すること」と述べた。自動化を進めることで、財務の高度化につなげたいという。

「今後は、エージェンティックオートメーションにチャレンジしたい。エージェンティックオートメーションの世界の中で、技術を使って効率化を実現し、9割以上の仕事を自動化したい」と山本氏。

生成AIの活用で100%の実現を目指す

SMBCグループはエージェンティックオートメーションの実現に向けて、生成AIを活用している。山本氏は「申請者がいかに楽に申請できるかが重要。紙とデータが混在しているので、証憑を正しく読めるようにする必要がある」と説明した。

そこで生成AIを育てて、人による確認も含めて96%の読み取り制度を目指す。「口座登録番号、合計金額など、数字だからこだわりたい。生成AIに教え込めば96%の精度を期待できると考えている」(山本氏)

具体的には、ルールベースの処理と生成AIを併用する。規定で定められていることはルールベースで処理し、残った処理は生成AIで導出したものを過去データと照合し、さらに導出された結果を人が確認する。

申請者が意識せずに正しい支払い処理ができるよう、最終的にチェックすればよいだけの状態を目指す。

山本氏は「100%になることが重要と考えている。人よりも正確であることを証明する。なぜなら、1%でも間違えていると、見直しをしなければいけないから」と述べた。

クラウドERPで果たすグローバル展開

さらに、山本氏は「グローバルに展開することにこだわる。グローバルで勝負しないと、勝ち続けることができない」と語った。そのために、連携会計モジュールを使って、拠点にある総勘定元帳をOracle ERPに集約したという。

まずは、日米10拠点で統合を図り、自動化を行う。「Oracle ERPを導入したことで、集約できる。グローバルの観点から決算の高度化につながる」と山本氏。

なお、山本氏は業界ならではの改革の難しさとして、「企業の規模が大きいこと」を挙げた。規模が大きな企業はオペレーションが末端まで行き届いているため、マインドチェンジは業務プロセスの変革に時間がかかるという。

そこで、「できるかぎり自動化してしまえば、ルールとプロセスが変わったという意識がなく、今までの業務がなくなったという意識でやってもらえる。納得させて進めるだけでは難しいと認識している」と、山本氏は話した。

山本氏は「経営業務改革により人の業務を作業から解放し、より一段高いインテリジェンスな仕事に変えたい。そして、本人がやりたい仕事にチャレンジする時間を作り出す」と語っていた。