仏アリアンスペースは2025年3月7日(日本時間)、新型ロケット「アリアン6」2号機の打ち上げに成功した。アリアン6の打ち上げは、2024年7月の初飛行に続く2機目となる。初飛行では問題が発生したが、今回はミッションを完全に達成。さらに、アリアン6にとって初めての商業打ち上げとなった。

  • アリアン6ロケット2号機の打ち上げの様子
    (C)ESA

アリアン6ロケット2号機

アリアン6の2号機(VA263)は、日本時間2025年3月7日1時24分(ギアナ時間 6日13時24分)に、南米仏領のギアナにあるギアナ宇宙センターのELA-4発射台から離昇した。

ロケットは、2本の固体ロケット・ブースターや、フェアリングを分離しながら順調に飛行し、第2段エンジン「ヴィンチ」の2回の燃焼ののち、離昇から1時間6分後に、フランスの偵察衛星「CSO-3」を所定の軌道に投入した。

当初、打ち上げは3月4日に予定されていたが、地上設備の問題のため延期されていた。

CSO-3は、フランス装備総局(DGA)が主導するMUSIS(多国籍宇宙ベース画像システム)プログラムの3番目の衛星である。3機の高分解能光学衛星で構成され、フランス軍と欧州の他国のパートナーに画像を提供し、防衛や安全保障に役立てることを目的としている。CSO-1とCSO-2は、どちらもアリアンスペースによって2018年と2020年にそれぞれ打ち上げられている。

各衛星は、エアバス・ディフェンス&スペースが主契約者として開発した。今回のCSO-3を含め、各衛星は高度800km、軌道傾斜角98度の太陽同期軌道に投入されている。

アリアン6は、欧州宇宙機関(ESA)とアリアングループが開発した欧州の次世代大型ロケットで、従来の主力大型ロケット「アリアン5」と、ロシアから輸入して打ち上げていた中型ロケット「ソユーズ」の後継機となる。

アリアン6の初飛行ミッション(VA262)は、2024年7月9日に打ち上げられ、搭載していた8機の超小型衛星を軌道に投入することに成功した。

しかし、第2段の補助動力装置(APU、Auxiliary Power Unit)に問題が発生し、第2段エンジンの3回目の燃焼ができなかった。そのため、軌道離脱ができず、搭載していた他の衛星(再突入カプセル2機)の実験と、第2段の制御落下には失敗していた。

APUは、液体水素と液体酸素の推進薬を一部加熱し、ガスを発生させる装置で、タンクの加圧や姿勢・加速度の制御などに使用される。ヴィンチ・エンジンの着火にはAPUの起動が必須であるため、この問題により3回目の燃焼と軌道離脱に失敗した。

その後の調査で、APUの温度が想定を超えていたため、ロケットのコンピューターがAPUを停止させたことが判明した。この問題を解決するために、エンジン点火前のAPU冷却シーケンスを改善することが決定され、ソフトウェアの改修が行われた。

今回の打ち上げでは、APUは正常に機能し、第2段エンジンの3回目の燃焼により、第2段機体はインド洋上で軌道から離脱し、大気圏に再突入した。機体は燃え尽き、宇宙ごみの発生を防止した。

  • 打ち上げを待つアリアン6ロケット2号機
    (C)ESA-S. Corvaja

初の商業打ち上げの成功

さらに、今回の打ち上げは、アリアン6にとって初めての商業打ち上げ——アリアンスペースが受注し実施した打ち上げでもあった。

アリアンスペースのCEO、David Cavailloles氏は打ち上げ後、「この打ち上げ成功は、欧州の宇宙にとって素晴らしい日であり、アリアン6の商業運用の始まりを示しています」と述べた。

また、アリアングループのCEO、マーティン・シオン氏は「この成功により、アリアンは欧州の宇宙への自立的なアクセスの復活を果たしました。現在、私たちのすべての努力は、アリアン6の生産拡大に向けられています」と述べている。

アリアンスペースは、2025年中にさらに4機のアリアン6を打ち上げることを計画している。また、将来的には年間10機の打ち上げをめざしている。

ビジネス面でも、すでに30件の打ち上げ受注を獲得しており、順調な滑り出しをみせている。

アリアン6にとって次の大きなハードルは、大型バージョンの「アリアン64」の打ち上げである。

前回と今回の飛行では、固体ロケット・ブースター2本と全長が短いフェアリングを装備した「アリアン62」が使われたが、アリアン64は、固体ロケット・ブースター4本と全長が長いフェアリングを装備する。これにより、静止衛星の2機同時打ち上げや、衛星コンステレーションの打ち上げなど、大型・大質量のペイロードに対応できる。

アリアン64の初飛行は、早ければ2025年後半に行われる予定で、米Amazonの衛星インターネット・サービス「カイパー」の衛星を打ち上げることになっている。

さらに、アリアン6は今後も段階的に改良を進め、性能や能力を向上させていく予定である。現在は、「ブロック2」の開発が進んでおり、機体の軽量化、ヴィンチ・エンジンの推力向上、打ち上げ基地の改良などを行い、2026年の初打ち上げをめざしている。

参考文献