Appleは3月5日、新しいチップセット「M3 Ultra」を発表した。同日発表の新しい「Mac Studio」(3月12日販売開始、32万8,800円〜)に搭載する。
Macチップの中で最大のパフォーマンスを提供しながら、Apple Siliconの特徴である高い電力効率も維持。従来の「M1 Ultra」の最大2.6倍となるGPUパフォーマンスを発揮し、“パーソナルコンピュータで史上最大”となる、0.5TB超(最大512GB)のユニファイドメモリをサポート。さらに、ポート当たりの帯域幅が2倍以上となる「Thunderbolt 5」にも対応し、高速な接続性と充実した拡張性を提供するとうたう。
M3 Ultraは、独自のUltraFusionパッケージングアーキテクチャを採用して構築し、1,840億個のトランジスタを搭載。10,000を超える高速接続で2つのM3 Maxダイを接続する埋め込みシリコンインターポーザを使い、2.5TB/s以上の低レイテンシなプロセッサ間帯域幅を実現。システムは組み合わせたダイを単一のユニファイドチップとして認識し、同時に高い電力効率も維持するという。
24の高性能コアと、8つの高効率コアを備えた最大32コアのCPUを搭載し、M2 Ultra比で最大1.5倍、M1 Ultra比では最大1.8倍というパフォーマンスを実現。さらに、Appleチップの中でも最大のGPUを採用し、M2 Ultra比で最大2倍、M1 Ultra比で最大2.6倍高速なパフォーマンスを実現する最大80のグラフィックスコアを搭載している(いずれもApple M1 Ultra、20コアCPU、64コアGPU、128GBのRAMを装備した前世代のMac Studioシステムと、Apple M2 Ultra、24コアCPU、76コアGPU、192GBのRAMを装備したMac Studioシステムと比較した結果)。
M3 Ultraのグラフィックスアーキテクチャは、Dynamic Cachingのほか、ハードウェアアクセラレーテッドメッシュシェーディングとレイトレーシングにも対応し、「高負荷なコンテンツ制作作業やゲームを軽々とこなす」とアピール。32コアのNeural Engineは、AIと機械学習(ML)を強化し、新しいMac Studioの中核となる「Apple Intelligence」の実行も担う。
M3 UltraはAIのために設計されており、CPU内のMLアクセラレータやGPU、Neural Engine、800GB/s以上のメモリ帯域幅を装備。M3 Ultra搭載のMac Studioを使い、6,000億以上のパラメータを持つ大規模言語モデル(LLM)を直接デバイス上で実行できるため、「AI開発のための究極のデスクトップになる」としている。
M3 Ultraのユニファイドメモリアーキテクチャは、“これまでのPCで最も高い帯域幅”を持つという、低レイテンシのメモリを採用。メモリ容量は最小96GBから最大512GB(0.5TB超)まで選択でき、「現在の最も先進的なワークステーション向けグラフィックカードで使われているメモリ容量を上回り、3Dレンダリング、ビジュアルエフェクト、AIなどの大量のグラフィックメモリを必要とするプロの作業の制限を取り除く」とうたっている。
Thunderbolt 5では、既存のThunderbolt 4の2倍以上となる最大120Gb/sのデータ転送速度を実現。Thunderbolt 5の各ポートは、チップに直接組み込んだ独自設計のコントローラに対応しており、Mac Studioの各ポートに専用の帯域幅を供給。「業界で最も高性能なThunderbolt 5を実現した」とする。Thunderbolt 5で複数のMac Studioのシステムをまとめて接続することで、コンテンツ制作やコンピュータサイエンス研究の限界を広げるワークフローに取り組むこともできるという。
M3 Ultraチップにはほかにも、パフォーマンスと効率の最大化を追求し、さまざまな先端技術を盛り込んだ。
- M3 Ultraのメディアエンジンは多くのビデオ処理を同時実行可能。専用のH.264、HEVC、4つのProResのエンコードとデコードのエンジンを備え、最大22ストリームの8K ProRes 422ビデオを再生できる
- ディスプレイエンジンは最大8台のPro Display XDRに対応し、1億6,000万以上のピクセルを実現
- Secure Enclaveはハードウェア検証によるセキュアブートやランタイムのエクスプロイト対策技術と連動し、最先端のセキュリティを提供する