決め手は同じ造船会社?郵船が「ディズニークルーズ」の運航へ

「ディズニークルーズの就航で国内クルーズ市場が盛り上がるだろう」と語るのは郵船クルーズの幹部。東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランド(OLC)が28年度の就航を目指すディズニークルーズについて日本郵船と業務提携に向けて基本合意した。

 同社と傘下の郵船クルーズがディズニークルーズの船舶管理と運航管理を担う方向で検討を進める。日本郵船グループが船員を派遣する予定。「船内のサービスなどはOLCが対応できるが、船の運航をはじめ、燃料の調達、メンテナンスなどに関する技術やノウハウは自社で得ることはできない」(同)。

 そこで白羽の矢が立ったのが郵船クルーズ。同社は日本籍最大の客船「飛鳥Ⅱ」を運航するほか、25年夏には新造客船「飛鳥Ⅲ」の就航を迎える。飛鳥Ⅱは5万444トンで乗客定員872人、客室数は436室を数える。飛鳥Ⅲの乗客定員は約740人で客室数は385室の5万2200トンという規模。クルーズ船としての飛鳥ブランドが確立されている上に、客船に対する運航ノウハウには長けている。

 ただ、OLCが計画しているディズニークルーズは飛鳥よりも規模が大きい。乗客乗員定員5500人、総客室数1250室の14万トンの大型客船で日本船籍とする予定。そんな中で、なぜ日本郵船だったのか。

 客船の運航は商船三井も手掛けている。しかも、日本郵船は一度撤退しているにもかかわらずだ。前出の郵船クルーズ幹部は次のように語る。「飛鳥Ⅲとディズニークルーズが同じドイツの造船会社であるマイヤー・ヴェルフトが手掛けていることが大きい」と話す。

 船が日本国籍を取得するためには、日本独自の法規制に則った仕様にしなければならない。その点、飛鳥Ⅲを手掛けているマイヤーにはそのノウハウが蓄積されているというわけだ。また、日本郵船社長の曽我貴也氏が若き頃、客船事業に関与していたこともあって「思い入れも強い」(同)ということもある。

 ディズニーという冠たるブランドのクルーズ船の就航で、現在の日本のクルーズ人口35万人が拡大する期待が集まるだけに、同船を運航する日本郵船の役割も重くなる。

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