タカキュー社長・伊藤健治が語る「洋服の〝着る楽しみ〟を! 会社設立75周年を迎えて」

洋服の〝着る楽しみ〟をより多くの顧客に提供したい─。1947年、当社の創業者・高久(たかく)泰憲(たいけん)・治子(はるこ)夫妻が東京・新宿駅西口の線路際に出店し、50年に高久(たかきゅー)を設立してから今年で75年の節目を迎えました。

 タカキューと聞くと、スーツというイメージが強いかもしれませんが、現在はスーツの売上高は半分程度で、残りはカジュアルファッションになっています。また、リアルな店舗も約120を数え、デジタル化の進展でECが普及しても、お客様が実際の商品を自分の目で見て、手に取り、当社の販売員と会話するという強みは今後も残り続けていくと思っています。

 アパレル業界ではコロナ禍を経てリモートワークが普及し、スーツの販売本数が減少傾向にありますが、何よりも少子高齢化という大きな向かい風が吹き付けていることは事実です。2024年も気温の影響で例年に比べても販売本数が落ちました。

 しかし私はタカキューの可能性を強く感じています。私自身、父がアパレル営業の仕事をしていたため、常にファッションが身近にある環境で育ってきました。新卒入社した「コムサ(COMME ÇA)」で知られるアパレルメーカー・ファイブフォックスでは、自分のブランドのブランドディレクタ―を務めると共に、初代社長の上田稔夫(故人)さんからは経営を学ばせてもらいました。

 こうした経験をタカキューでも生かしていきたいと思っています。特にタカキューが収益悪化で私的整理を受けた背景には、商品そのものというよりも、商品の構成や陳列方法に課題があったように思います。もともとデザイナーとしての経験を持っている自分であるからこそ、お役に立てることが多いのではないかと考えています。

 先ほど申し上げたように、タカキューには100を超える店舗を持っており、バイイングパワーがあります。一部では製造小売り業態(SPA)の機能も持っているため、これまで当社が得意としていた40~50代より若い20~30代といった若年層に向けた「スーツ屋さんが作ったカジュアルファッション」という領域を開拓していくことができると期待しています。

 例えば、私が24年9月に社長に就任して最初に行ったことが店舗と商品陳列の改革でした。東京・ヤエチカ店では売りたい商品を前面に出した売り場から店内の奥まで見通せるように計算し、お客様の動線を確保。商品や屋号をシンプルに見せる構図に変更しました。変更後3日間の売上平均は前年比318.6%を記録。お客様視点に立って、見やすくて買いやすい店舗に変えた成果が出たのです。

 ラックに何本のスーツをかけるか、シャツの棚にしても天井から商品部分に「抜け」空間を作ることで、シャツが集積されているという圧迫感を軽減し、シャツだけで単調に見えないように、シャツに関連するコーディネートパーツを入れることで着こなしのイメージをつきやすいようにする。商品に力があれば、こういったちょっとした工夫で売れ行きは変わるのです。

 そもそも洋服は着る人たちにワクワクを与えるものです。自分の好きな洋服を着れば、気持ちが引き締まって仕事への精も出るでしょうし、人に見せたいという思いが募り、人と会うことにも積極的になるでしょう。そして着飾る人が増えれば増えるほど、周囲はどんどん幸福感に満たされていきます。洋服とは元来、そういった力を持っているのです。

 タカキューの今後の展開に是非ともご期待ください。

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