【厚生労働省】基礎年金の給付水準底上げ 5年後まで可否判断を先送り?

2025年の年金制度改革で焦点となっている基礎年金(国民年金)の給付水準底上げ策について、厚生労働省は5年後の30年改革までに、本格実施の可否判断を先送りする方向で検討に入った。基礎年金の底上げは、厚生年金の積立金と国費を投入して将来世代が受け取る基礎年金を3割程度改善する方策。ただ、現在の高齢世代の厚生年金の減額や、将来的な増税という形で国民負担が生じるため、与野党が懸念を示している。

 厚労省幹部は「少数与党下では国費投入に必要な安定財源の確保など、重い決断を下すのは難しい。今後、数年程度の経済推移を見るということだ。先送りでもあきらめたわけでもない」と強調。自民党の閣僚経験者は「年金財政は今後の経済状況によって変わり得る。29年の次期財政検証を経て、高齢世代の厚生年金が減らないなど、より良い条件で底上げの可否を判断できるかもしれない」と話す。

 意外なことに、基礎年金底上げ策には財務省内からも異論が出ている。財務省はかつて、社会保障財源を確保するための消費税増税を実現するため、政財界やマスコミなどに徹底的な根回しをしたことで知られる。

 増税が不可欠な基礎年金底上げでも賛成に回ると思いきや、「もし消費税をさらに引き上げるなら、基礎年金だけでなく医療介護など社会保障全体の改革とセットにしないと意味がない」(財務省関係者)というのが理由だ。

 年金改革には、他にもパート労働者への厚生年金加入拡大など重要項目が盛り込まれる。厚生年金の加入拡大でも、従業員50人以下の中小企業や理美容・飲食などの個人事業主が保険料負担増を懸念し、施行時期を遅らせるよう自民党にロビー活動を展開し、自民党内の議論が難航。さらに野党とも合意形成を図らないと関連法案の成立は見通せないため、年金局幹部は「霧の中を一歩ずつ進んでいる状況」と険しい表情だ。

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