日本IBMは2月7日、同4日に日本放送協会(NHK)から日本IBMに対し、営業基幹システムの開発・移行業務に関する業務委託契約の解除に伴う既払の代金の返還および損害賠償を求める民事訴訟を東京地方裁判所に提起したこと、およびこれまでの経緯が公表された。
訴訟までの経緯
同社は、2月7日時点において訴状を受領していないことから、NHKによる請求内容に関するコメントは差し控えるとしつつ、経緯に関する見解について説明している。
同プロジェクトは、NHK指定の移行方針のもと営業基幹システムを新しい基盤へ移行するものであり、プロジェクト開始後に現行システムの解析を実施のうえ、移行方針やスケジュールなどを確定するという契約に沿って検討を進めていた。
現行システムの解析を進める中で、提案時に取得した要求仕様書では把握できない、長年の利用の中で複雑に作り込まれた構造となっていることが判明したため、日本IBMはNHKに対して解析の進捗状況、課題、それに対する対応策を随時報告し、ともにその対応を検討してきた。
こうした中で同社は同システムを利用する業務の重要性も鑑みて、NHK指定の移行方針による2027年3月までの安全かつ確実なシステム移行にはリスクを伴うことを伝えてきたという。
そして、2024年5月に従来の納期のもとで、品質を確保した履行は困難であることを報告し、取りうる選択肢とそれぞれの利点およびリスクなどを提示。NHKは、これをふまえて契約を解除することを決定した。
同社はこれまでの解析・調査結果などをふまえて、確実な移行方式の実現に向けた建設的な協議の開始について、2024年夏以降、先月に至るまで複数回にわたり申入れを行ったという。しかし、NHKは協議の開始に応じることなく、代金の返還と損害賠償請求を主張するにとどまり、今回同社に対して訴訟提起したことを公表したとのことだ。
日本IBMではNHKと協議の継続を希望しており、並行して訴状の内容も検討し、裁判のなかで同社のこれまでの対応と見解を主張していく方針だ。