マネーフォワードは2月5日、都内で法人向け事業に関する説明会を開催した。説明会では、マネーフォワード 執行役員 ビジネスカンパニー CSOの山田一也氏がプレゼンテーションを行った。

  • マネーフォワード 執行役員 ビジネスカンパニー CSOの山田一也氏

    マネーフォワード 執行役員 ビジネスカンパニー CSOの山田一也氏

Businessドメインの売上高は前年比35%増の252億5000万円

同社の法人向け事業のプロダクトは、BusinessドメインとFinanceドメイン、SaaS Marketingドメインが担っており、個人事業主から中小企業、中堅企業・IOP準備企業/上場企業向けまで幅広く展開しており、バックオフィス業務を網羅するラインアップを揃えている。

  • 法人向け事業のプロダクトラインアップ

    法人向け事業のプロダクトラインアップ

まず、山田氏は通期の決算について触れた。同社では2024年11月期通期の決算において売上高が前年比33%増の403億6000万円となり、Businessドメインが売上高の62.6%を占めている。

Businessドメインにおける2024年11月期の売上高は、前年比35%増の252億5000万円、法人ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)が同32%増の219億8000万円、法人課金顧客は同27%増の19万と好調だった。山田氏は「特に中堅企業以上の法人を重視したことが結果に結びついている。また『マネーフォワード Pay for Business』が注目を浴びて伸びてきている」と述べた。

  • 2024年11月期におけるBusinessドメインのハイライト

    2024年11月期におけるBusinessドメインのハイライト

同社における中長期の目標は、2028年11月期の通期売上高を1000億円以上(Businessドメインでは650~700億円)、EBITDA(Earnings before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization:利払い前・税引き前・減価償却前利益)は300億円以上を目指している。2025年11月期には、これまでFinanceドメインに計上されていた「マネーフォワード 掛け払い」「マネーフォワード アーリーペイメント」「マネーフォワード 請求書カード払い for Startups」などをBusinessドメインに移管する。

  • 中長期の目標数値

    中長期の目標数値

売上高1000億円以上に向けた3つの取り組み

中長期的な目標達成に向けては「個々のプロダクト強化と併用体験の向上」「SaaS×Fintech×AIの継続的な推進」「M&A(グループジョイン)を通じた事業領域の拡大」の3つを山田氏は挙げている。

個々のプロダクト強化と併用体験の向上

個々のプロダクト強化と併用体験の向上では、コンポーネント型ERPの実現に向けて、マスター共通化やワークフロー共通化、他社プロダクトへの組み込みなどを引き続き取り組む。

  • コンポーネント型ERPの実現に向けて、マスター共通化やワークフロー共通化していく

    コンポーネント型ERPの実現に向けて、マスター共通化やワークフロー共通化していく

その一環として、説明会当日の2月5日に「マネーフォワード クラウド」が新リース会計基準に対応。

  • 「マネーフォワード クラウド」で新リース会計基準に対応する

    「マネーフォワード クラウド」で新リース会計基準に対応する

これは、2027年4月1日以降に開始される事業年度から上場企業・大企業を対象に新リース会計基準が強制適用されることから、一定規模以上の企業は法務、経理などの関係部署やグループ会社との連携、業務フローの整備やシステム設計など、膨大な作業が発生するため、早期の対応が必要となっている。

そのため、同社はマネーフォワード クラウドユーザーが新基準へスムーズに対応できるよう、リース判定やリース契約、リース資産を一元管理できる台帳、新基準適用で生じる使用権資産・リース債務・減価償却費・支払利息の計算ができる機能など、サービス開発を予定している。

SaaS×Fintech×AIの継続的な推進

SaaS×Fintech×AIの継続的な推進については、マネーフォワードクラウド上で決済、資金調達などのFintechを組み込み、クラウドですべての業務が完結する世界の実現を目指すという。

山田氏は「これまではファイナンスサービスはグループ会社のマネーフォワードケッサイ、SaaS(Software as a Service)はマネーフォワード クラウドと別々の事業展開、顧客基盤だったが、2025年11月期からは統合して積極的にマネーフォワード クラウドのユーザーに対し、Fintechソリューションを組み込み、クロスセルしていく」と力を込める。

また、2025年中に送金プラットフォームの提供開始を予定しており、バックオフィス業務と決済業務の分断を解消し、支払いまで一気通貫したサービスの提供を目指す考えだ。さらに、生成AIの取り組みではOpenAIのサービスを活用し、「マネーフォワード クラウド連結会計」で多言語や表記ゆれを考慮して、グループ会社の勘定科目を連携科目に自動提案する機能などを開発しており、今後もそのほかのプロダクトで順次提供を予定している。

  • SaaS×Fintechの取り組み

    SaaS×Fintechの取り組み

M&Aを通じた事業領域の拡大

M&Aを通じた事業領域の拡大に関しては、戦略に「プロダクトラインアップの拡充」と「事業領域の拡大」を据え、これら2つの観点に当てはまる企業を対象としている。昨年11月にSaaS型社宅管理システムを提供するシャトクをグループ会社化している。

加えて、昨年12月にはグループ会社であるマネーフォワードクラウド経営管理コンサルティング(MFCC)が本格始動し、経営管理用域におけるSaaSとコンサルティングサービスの提供を開始。

MFCCの始動に先立ち、11月に経営管理・予算管理システム「Sactona」を提供するアウトルックコンサルティングの株式を60%取得し、12月18日付でグループにジョインすることを公表したほか、中小・中堅企業を中心に経営管理プラットフォーム「Manageboard」を提供してきたナレッジラボとの株式交換を行い、2025年1月にマネーフォワードの100%グループ会社化した。

  • それぞれの強みを掛け合わせて経営管理の市場を“面”で獲得していくという

    それぞれの強みを掛け合わせて経営管理の市場を“面”で獲得していくという

マネーフォワードクラウド経営管理コンサルティング 代表取締役の島内広史氏は経営管理領域に本格的に参入する理由について「マーケット規模の大きさと成長率の高さに加え、財務会計に続き経営管理領域もクラウド化の波が来ている。また、生産性向上や資金繰り改善支援に加え、お客さまの成長支援を行うため」と説明している。

  • マネーフォワードクラウド経営管理コンサルティング 代表取締役の島内広史氏

    マネーフォワードクラウド経営管理コンサルティング 代表取締役の島内広史氏

そもそも経営管理は企業経営に必要な資源、人材、コスト、情報などのリソースを管理して適切に調整・配分し、経営改善を行い、円滑な企業経営を実現することであり、身近な例としては予算管理が挙げられる。市場規模は2022年度から2027年度のCAGR(年平均成長率)は約2倍への拡大が見込まれている。

  • SMBからエンタープライズ企業まで幅広くカバーする

    SMBからエンタープライズ企業まで幅広くカバーする

島内氏は「バックオフィス業務の生産性向上からはじめ、経営の見える化を経営管理領域では重点的に取り組む。その先にデータを見ることでビジネスチャンスや課題を発見・改善し、企業の成長を支援していく」と意気込みを語っていた。