2月3日にソフトバンクグループ(SBG)と米OpenAIは生成AIの共同出資会社「SB OpenAI Japan」を設立すると発表した。本稿では、ソフトバンクグループ 孫正義会長兼社長とOpenAI CEOのSam Altman(サム・アルトマン)氏の対談を紹介する。
「Stargate Project」に関する見解
孫氏(以下、敬称略):今日の発表を非常にうれしく思っています。まず「Stargate Project」について、どのように考えていますか?
アルトマン氏(同):そうですね、素晴らしい瞬間に居合わせることができました。どのように、すべてを整理して取り組むのかということもあり、当初は発表できるのかという話もありましたが、発表できました。
世界はコンピュートがますます重要になるでしょうし、より小さいモデルでさまざまなことができるようになります。また、インテリジェンスが前進していくことで、コンピュートの演算能力が必要になり、われわれはモデルを構築するための大規模な演算能力を必要としています。
孫:以前、私はあなたにAGI(汎用人工知能)はいつごろ到来するのか?コンピューティングパワーはどの程度の規模なのか?と聞きました。その際、あなたは「多ければ多いほど良い」という非常にシンプルな答えを出しました。
アルトマン:そうです。多ければ多いほどいいわけです。人によっては圧縮した形でも可能だという人もいるかもしれませんが、それだと答えも小さい。多くの人が勘違いしていることとして、リターンがどれだけ大きく変わるのかということを把握していないことです。大きなコストをかけた方がリターンも大きなものになります。
孫:その考えは、インターネットの黎明期を思い出させますね。当時はコストがかかり、ブロードバンドが登場し、キャパシティと帯域がなぜこんなにも必要なのだと言われました。しかし、その後に高画質の画像や動画などを扱うようになり、キャパシティがさらに必要だと判明しました。
インターネットはバーチャルなものだから本当に使えるものではない、基本的には無料のサービスばかりでビジネスモデルも大したものではない、という非難・批判されていました。
アルトマン:インテリジェンスは、どれだけ賢くなる必要があるのかと聞かれますけど賢ければ賢いほど良い。それが難しい質問や問題、課題を解決することができるわけですから。2018年と2019年にGPT-1、GPT-2をローンチし、その後はGPT-3で人々が関心を示し出し、ChatGPT、GPT-4で実際に使えると感じたのではないでしょうか。このような進捗を見ると、モデルは素早く改善されて安価になることも分かってきました。
孫:私からするとモデルは1年に10倍ほど改善されているように感じますし、パフォーマンスも同程度の向上が図れているように感じます。DeepSeekを見ればキャッチアップできるのだと考えるでしょう。
こうしたことが連続すれば、あり得ないほどのインテリジェンスが生まれる可能性があります。とはいえ、Stargateについてはイーロン・マスクが噛み付いてますが、私たちは絶対に実現させます。
Stargateは日本に拡張させなければなりません。もちろん、規制に準拠しますし、プライバシーやセキュリティの問題に対応しなければなりませんが、ソフトバンクがデータセンターを整備しているので日本のITインフラに拡張できることをうれしく思います。
最新の推論もできる「OpenAI o3-mini」はレイテンシが100ミリ秒と返信の速度がすさまじく、リアルタイムのレスポンスには自信を持っていますよね?
アルトマン:自信を持っています。ユースケースはエッジに近いところに存在する必要があると思います。安全保障的な観点から、モデルは世界中で展開しています。
AIを活用しない企業は、いずれ成長に問題を抱える
孫:新会社から提供する最先端AI「クリスタル・インテリジェンス(Cristal intelligence)」について説明してもらえますか?単一の業務を遂行するのか、それとも洗練されたエージェントなのか教えてください。
アルトマン:ジェネレーティブエージェントとうものがあります。これはコンシューマで使えるものであり、企業・組織独自のものとしてのエージェントです。
例えば、文脈の前後を理解した従業員のエージェントが欲しい企業であれば、すべてのシステムに接続する必要がありますし、すべての情報、コーディングを理解し、働き方についても理解する必要があります。
カスタマイズで各企業ごとに必要になりますが、Webの閲覧やコーディングのみならず、企業に存在するありとあらゆるパワーを統合させることができれば非常に強力になります。
孫:最善のツールがあるかないか、それぐらい大きく違います。
アルトマン:その現実感だと思います。一例として刀を作成するには鍛造して鞘を付けてと、さまざまな段階を踏みます。こうしたものが技術であり、AIがまさに技術として変化していくものだと感じています。AIを統合しない、組み込まない企業は会社として成長の問題が生まれてくると思います。
孫:AIの出力は99%に近いと考えていますが、実際に人間の安全性や国家安全保障など最後の1~2%をファインチューニングし、努力する必要がありますよね。
アルトマン:その通りです。社会のどこが境界線かは不明かもしれませんが、われわれは非常に気にして努力を続けています。
AIエージェントのネクストレベル「イノベーター」とは?
孫:政治的な話には踏み込みたくはありませんが、国によっては誤った使い方をする非常に危険な状況が起こりうる国もあるかと思います。一方でAIはコストを削減するものなのか、あるいは人間の仕事を奪ってしまうものなかという議論がありますが、どうですか?
アルトマン:お金が問題でなく、どれだけできることが増えるかということだと思います。もちろん、その人がやりたいことができるような時間を与えることが素晴らしいですし、心配してしまうことも理解できます。
しかし、人間がより高い目標を行うことも必要だと考えています。AIを効率的にできるようにすることをもたらし、これまで得られなかった新しい知識を与えてくれることです。
科学的な見識も広がり、長年にわたり時間をかけていた問題に対する知識が1年で増えるということもあり得るかもしれません。こうしたことは生活の質に大きく影響し、以前はできなかったことができるようになります。
現在のAIは既存の情報をまとめ、統合し、結論を導き出すことは非常に得意ですが、新しい科学的な認識をすることができませんから、これが次のレベル=“イノベーター”と呼ぶレベルです。
孫:ただ、AIには限界があるという意見もあります。人間が教えるから人間より賢くなることはあるのかと、そこが限界じゃないかと。イノベーターについてもう少し説明してください。
アルトマン:これは人のメカニズムと似ています。問題を解決しようと試みたとき、まずはアイデアからスタートしますよね。従来の知識と結び付けて可能性を見極めていく、これが人間の創造のプロセスだと思います。何度も繰り返しで既存のものに変更を加えて、良さそうなものに進んでいく。それがAIでできるようになると考えています。
孫:リーズニング(理由付け)が最初のステップになるということですね。人間が確信を持つ際には、さまざまな角度から探求します。AIエージェント的なリーズニングをすることにより、さまざまなトライを実行に移す、これがまさにイノベータのカギではないでしょうか。数十億というトライ&エラーを行うというイメージですね。
アルトマン:多くのイノベーターが共同作業すると考えてみてください。互いのアイデア、専門知識を持ち寄りながら仕事をすることは非常にパワフルです。
AIに対して妥当で健全な規制であれば必要
孫:サイバーセキュリティについてはどうでしょうか?あまり規制で制限されたくはないですけどイノベーションは機会を与えられるべきだとは思いますが、それでも健全な規制が必要ですよね。
アルトマン:確かにサイバー攻撃に使えるようなプログラミングも良くなってきてはいますが、AIが貢献できる部分はあるため私は楽観視しています。健全は必要だと思います。遅すぎる、厳しすぎるのは良くありませんが、妥当で健全な規制であれば必要です。
孫:サム(アルトマン)が業界には規制が必要と言うとは驚きですね(笑)。しかし、重要な産業には規制があります。その反面、人間には何が残されると思いますか?
アルトマン:新しい仕事はいつでも見つかります。例として500年前、1000年前の人から見れば現代の人間がやっていることは仕事じゃないと思うかもしれません。忙しすぎるし、重要にも思えないと。
ただ、さまざまな理由でさまざまな仕事をしています。将来的にAIがさまざまな仕事を行い、大半のことをカバーしてくれるとなれば、将来の人間はより面白いことができるかもしれません。


