KDDIは1月31日、宇宙航空研究開発機構(以下 JAXA)の宇宙戦略基金の技術開発テーマである「月-地球間通信システム開発・実証(FS)」の委託先に選定され、月-地球間および月面での大容量通信実現に向けた実現可能性について2月から検討を開始することを発表した。

今後はKDDIが案件を取りまとめる代表機関となり、京セラ、NECスペーステクノロジー、アークエッジ・スペース、日本電気(NEC)、三菱電機、KDDI総合研究所ら連携機関とともに検討を進める。

検討の背景

現在はNASAやJAXAをはじめとする世界各国の宇宙機関は、2020年代後半の有人月面着陸、および継続した月面探査活動を通じた科学的発見、産業振興、次世代の人材育成を目指す「アルテミス計画」を進めている。この計画においては、月面探査活動に必要となる月-地球間、および月面での大容量通信を実現する環境構築が求められる。

これに対しKDDIは、2022年からJAXAと月面探査活動に向けた月-地球間の超長距離通信システムなどの全体的なアーキテクチャの検討を、コンソーシアム企業と共に行ってきた。また、2024年にはGITAI USA Inc.と月面での通信環境構築に向けたロボットによる基地局アンテナ設置の実証を実施した。そこで、これまでの取り組みの成果を生かし、1年間のフィージビリティスタディを通じて月-地球間および月面での大容量通信実現に向けた実現可能性を検討するという。

フィージビリティスタディの検討内容

フィージビリティスタディにおいては、地上局による月-地球間通信として、X帯およびKa帯を活用した長距離で大容量通信が可能な地上局の基本設計と、地上局同士を接続するネットワークの基本設計を検討する。

また、月面モバイル通信の実現に向けて、月面電波伝搬シミュレーションなどを活用した月面モバイル通信エリアの設計、月環境で使用可能なモバイル通信機器の機能・性能要件の抽出、月面基地局の支柱構築方法の検討、月面モバイル通信システムの運用コンセプト策定などを進める。

  • アルテミス計画に向けた月通信セグメントと案件の対象

    アルテミス計画に向けた月通信セグメントと案件の対象