花王 スキンケア研究所は1月30日、必要な皮脂は残しながら、肌悩みの原因となる皮脂中の不飽和脂肪酸を選択的に除去する、新たな洗浄技術を開発したことを発表した。

なお今回の研究成果は、「第75回コロイドおよび界面化学討論会」(2024年9月17~20日)、「第2回日本化粧品技術者会学術大会」(2024年11月18日~20日)、「第48回人間‐生活環境系シンポジウム」(2024年12月7~8日)にて発表された。

肌悩みの原因のみ洗い落とす新洗浄技術を開発

ヒトの身体では、背中上部はべたつきやニキビが気になり、逆に脚や腕は乾燥してしまうなど、さまざまな肌の悩みが同時に起こっている。その一因である皮脂は、過剰になるとべたつきを引き起こす一方、肌を乾燥や外部刺激から守る役割も担うため、体表から一律に皮脂を除去するのではなく、必要な皮脂は残しながら洗える技術が必要とされている。

花王は、20~45歳の日本人女性33名を対象に調査を実施。肌バリア機能に悪影響を及ぼすことが知られる皮脂の不飽和脂肪酸について、背中においてもその量が多いと肌バリア機能が低下することを確認したとする。なお肌バリア機能が低いと、肌荒れやニキビが発生しやすくなるため、不飽和脂肪酸を取り除くことが肌悩みの改善につながると考えられるという。

しかしながら、皮脂の含まれる量が多い背中に合わせて不飽和脂肪酸を含む皮脂を取り除いた場合、その他の皮脂量が少ない部位では、皮脂量の不足により乾燥が引き起こされる恐れがある。そこで花王は、肌の保湿などに必要な皮脂は残しつつ、肌バリア機能の低下を引き起こす不飽和脂肪酸を選択的に取り除く、新たな洗浄技術の検討を開始したとのことだ。

皮脂などの油性汚れを落とすために広く用いられる界面活性剤を探索した花王だったが、不飽和脂肪酸に対する洗浄効果が高いもののほとんどは、必要な皮脂までも落としてしまったという。しかしスクリーニングを進める中で、花王が開発したサステナブル界面活性剤バイオIOS(オレフィンC16スルホン酸Na)が、求める洗浄性を満たすことが確認されたとした。

その後詳細に解析したところ、バイオIOSは特殊な化学構造を持っており、不飽和脂肪酸の中に浸透してそれを水に流されやすい性質に変化させることが判明。一方で不飽和脂肪酸以外の皮脂中成分には影響を与えないため、トリグリセリドなどの必要な皮膚は肌上に残すことができるとする。

バイオIOSと接触した際の不飽和脂肪酸とトリグリセリドの変化(出所:花王 YouTubeチャンネル)

皮脂を適度に落とす最適な洗い方も検討

また、タオルなどで擦り洗いをすると皮脂そのものが物理的な力で落ちてしまうなどの課題もあるため、バイオIOSの選択洗浄性を活かすために最適な洗い方も検討された。その結果、さまざまな洗い方の中で、洗浄剤を泡にして手で洗うことが最も適していることがわかったとのこと。さらにその他の原料との組み合わせも検討し、泡質などを最適化することで、皮脂中の不飽和脂肪酸を選択的に除去する新しい洗浄技術として確立できたとした。

花王は今回の技術によって、皮脂成分から選択的に不飽和脂肪酸を取り除き、その他の皮脂は取りすぎないという、従来は困難だった皮脂成分の洗い分けを可能にしたとする。これにより、背中のべたつきやニキビ、脚や腕の乾燥などといった多岐にわたる肌悩みを改善できると考えられるという。また気候などの面でも肌を取り巻く環境が厳しくなる中、肌にとって悪影響のある要素を適切に取り除けるこの洗浄技術は、肌を健やかに保つことに貢献できるとしている。