日本科学未来館とアルプスアルパイン、オムロン、清水建設、日本IBMの4社が正会員として活動する次世代移動支援技術開発コンソーシアムは1月22日、共同で開発を進める視覚障害者向けナビゲーションロボット「AIスーツケース」のデザインを一新し、新たな車輪機構やセンサなどの新機能を搭載したモデルを開発した。今後、ナビゲーションの精度を高めるとともに、AIによる音声対話などの新たな機能の開発を進め、大阪・関西万博で本格的な実証実験を予定している。

  • 「AIスーツケース」

    「AIスーツケース」

AIスーツケースの新機能

AIスーツケースは、視覚障がい者を目的地まで自動で誘導することを目的に開発されているスーツケース型ロボット。これまで、未来館とコンソーシアムが相互に技術協力を行い、大型ショッピングモールや新千歳空港、未来館などの屋内施設で一般ユーザーによる実証実験を行ってきた。

また、Digital Innovation City協議会の協力のもと、未来館周辺の屋外公共エリアでの一般ユーザーによる実証も行い、昨年4月からは未来館で毎日定常的に試験運用を実施し、多くの実証データを蓄積することで、ナビゲーション技術の向上に取り組んでいる。

  • 「AIスーツケース」の機能

    「AIスーツケース」の機能

AIスーツケースのボディには、これまで市販のスーツケースを活用してきたが、今回オリジナルデザインを新たに開発。段差の乗り越え機能を強化した新車輪機構や、低位置の障害物も認識するセンサを追加し、ハンドル部分にディスク型の方向提示装置を採用するなど、新機能を搭載した。

具体的には段差をスムーズに乗り越えるための車輪やストッパーなどの機構を新たに開発したほか、低い位置の障害物や段差を検知するためのセンサを追加し、安全性を向上させた。

また、ユーザーが安心して使用できるよう、ハンドルを握りながら進行方向を確認できるディスク型の方向提示装置を採用したことに加え、利用者の利き手に合わせて左右どちらの手でも利用できるデザインにし、持ち手の高さも柔軟に変更できるようにした。

  • 「AIスーツケース」のハンドル

    「AIスーツケース」のハンドル

さらに、AIスーツケースに搭載するカメラで周囲を画像認識し、周辺の建物や道路状況、周囲の歩行者に関する情報を音声でアナウンスするAI音声機能も搭載。RGB-Dカメラの画像から周囲を認識し、周辺の建物や道路の状況、歩行者に関する情報を音声でアナウンスする。今後、パビリオンや施設情報に関してユーザーからの質問に答えることができる機能や、対話からユーザーの興味を導き出しおすすめの行き先や案内ルートを提案・設定することができる機能などの開発も予定している。

万博会場内では2025年4月から10月まで複数台を同時運用することで、社会実装に向けた運用モデルの技術的な課題を洗い出すなどの検証を行います。引き続き、2025年日本国際博覧会協会と調整を進めていく考えだ。