双日、BETA Technologies、ヤマトホールディングス(ヤマトHD)、北九州市の四者は1月20日、北九州空港を拠点とする電動航空機による貨物輸送に向けた共同検証を実施することについて、連携協定を締結した。

同日、北九州市役所で連携協定の締結式が開催され、双日 常務執行役員 橋本政和氏、BETA 最高収益責任者 ショーン・ホール氏、ヤマトHD 代表取締役副社長 栗栖利蔵氏、北九州市 市長 武内和久氏が参加した。

  • 連携協定の締結式の様子

    連携協定の締結式の様子

共同検証の背景

双日は、65年以上にわたり米国ボーイングの日本向け民間航空機総代理店として航空機の販売に携わる中で培った、ネットワークや豊富な知見と経験をもとに、日本における電動航空機の市場開拓と確立に向けて2022年からBETAと協業している。加えて、同社は日本での許認可取得に向けたサポートを含め、電動航空機を有効に活用する導入方法の確立を進めている。

双日と協業しているBETAは、安全性を最重要視して電動航空機の社会実装を目指しており、物流や軍用、医療搬送、旅客といった領域でeCTOLとeVTOL(電動垂直離着陸機)を開発している。

BETAは米国において米軍や医療、旅客事業者と試験飛行の実績を積み重ねるとともに、自社で開発している急速充電設備を2024年までに米国内の44カ所に設置するなどの取り組みを広げている。

ヤマトHDは2024年2月にヤマトグループ中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」を発表し、持続可能な未来の実現に貢献するため、多種多様なパートナーとともに「新たな物流」「新たな価値」の創造を目指している。同社は今回の検証地となる北九州市と2023年7月に物流連携協定を締結しており、持続可能な物流ネットワークの構築と地域産業の競争力向上を目標に取り組みを推進している。

また、ヤマトHDは2024年4月から貨物専用機の運航を開始し、北九州空港を重要な航空貨物輸送のハブ拠点として運用するなど、「新しい運び方」をテーマにさまざまな取り組みを進めている。

北九州市は、最先端技術を活用することで、北九州空港を拠点に新たなビジネスやサービスの創出を目指している。ヤマトHDとの物流連携協定に基づき、環境に配慮しつつ経済と社会を発展させる「新しい運び方」をともに構築する取り組みを進めていることから、今回の検証への参加を決めたという。

電動航空機による貨物輸送の実用化に向けた共同検証

今回発表された共同検証は、より効率的かつ持続可能な国内物流網の構築を見据え、電動航空機導入の効果検証や実装に向けた課題抽出を行うことを目的として行われるもの。

2025年1月20日から最長2年間を検証期間として、経済合理性や貨物の搭降載などの運用面、充電設備などの技術面の検証を行う。

具体的には、空港内の貨物動線の検証や搭降載の確認などを行う「貨物オペレーション検証」、必要な充電設備や空港設備の確認などを行う「インフラ検証」、機体性能・通信環境の分析、必要な許認可の確認などを行う「試験飛行」、運航コストの算出や経済性の確認を行う「コスト検証」の4点が実施される予定。

  • 具体的な検証内容

    具体的な検証内容

試験飛行は、2025年夏に実施予定で、BETA製のeCTOL(電動固定翼機)「ALIA CTOL」を使用し、北九州空港と宮崎空港を2日間にかけて往復することで、電動航空機による貨物輸送の実用化に向けた共同検証を行う。

  • BETA社製eCTOL「ALIA CTOL」

    BETA社製eCTOL「ALIA CTOL」

電動航空機による貨物輸送を想定した2地点間飛行としては、日本初となる見込みで、今回の検証を通じて、スピード輸送による地方創生や物流における脱炭素化の実現、地方・離島向け物流ネットワークの強化など、持続可能な物流網の構築を目指す。

各社の役割

各社の役割としては、双日が「共同検証の取り纏め及び推進」「試験飛行に必要となる許認可取得支援」「日本国内にBETA機を導入するための体制構築」を行い、ヤマトホールディングスが「貨物輸送に関するオペレーションのアドバイス」「貨物輸送におけるeCTOLの有用性検証」を担当する。

またBETA Technologiesが「機体および充電インフラの運用に伴う技術的アドバイス」「試験飛行における許認可取得、機体提供、運航」、北九州市が「北九州空港を拠点とした各種インフラ整備支援」「関係各庁との調整支援」を行う。

会見の最後には、今回の電動航空機による貨物輸送の検証において機体の愛称を募集することが発表された。テーマは「わくわくするような未来の空港づくり」で、「未来に向かって夢を乗せて羽ばたく機体にふさわしい名前」を募集するとのこと。