西武HDが「旧赤プリ」跡地を売却 「不動産回転型ビジネス」の第1弾

不動産の保有を前提とした従来のビジネスモデルから転換し、物件の流動化と、その資金を活用した再投資を継続的に実施する。(東京の)高輪、芝公園などの都心エリアに加えて、西武鉄道沿線の不動産再開発事業、軽井沢、箱根、富良野などのリゾート開発事業も同時に進行していく」ー。西武ホールディングス(HD)社長の西山隆一郎氏はこう意気込みを語る。

 同社が新しい事業の構築に動き出す。「旧赤プリ」跡地にある「東京ガーデンテラス紀尾井町」を米投資ファンドのブラックストーンに約4000億円で売却。同社がかねてより掲げていた「不動産回転型ビジネス」というものだ。分かりやすく言えば、既存の不動産の価値を上げて流動化。売却で得た資金を未開発の地域や価値向上が必要な地域の開発に当てる。

 その第1弾が今回のディール(取引)。今後は西武HDが保有する東京23区の約40万平方メートルに加え、全国に1億平方メートル以上ある保有不動産で不動産回転型ビジネスを展開していく考え。35年度までに約1兆8500億円の投資枠を設ける。

 同ビジネスは大きな売却益を見込める一方、賃料収入といった安定収入が見込めにくくなり、売却額も市況に左右されやすい。ただ、ホテルやレジャー関連の施設が多い同社にとって、コロナ禍のような感染症の流行が起こると大きなダメージを負う。それを教訓とした新たなビジネスモデルとなる。

 一方、JR東日本との"距離"を指摘する声も。私鉄幹部は「JR東日本もファンドに対し、『JR南新宿ビル』を売却した。ワーケーションや鉄道技術分野での協業などで両社の距離感は近づいている」と話す。

 本社が入居する「ダイヤゲート池袋」や商業施設「エミテラス所沢」なども流動化の対象となるだけに、高値の買い手がつくような施設づくりができるかどうかが試される。

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