レノボ・ジャパン(レノボ)は11月26日、同社の年次イベント「Lenovo Tech World Japan 2024」を東京都内で開催した。10月に米国ワンシントン州シアトルで開催されたグローバルでの年次イベント「Lenovo Tech World '24」で発表された新技術などが紹介された。

基調講演には同社の檜山太郎社長が登壇。檜山社長は「日本においても生成AIは検討から実用へとフェーズが変わろうとしている」と切り出し、「レノボは、AI時代に向けて『Smarter AI for All』というビジョンを掲げ、成長と革新のための投資を加速させている」と述べた。

  • レノボ・ジャパンは26日、年次イベント「Lenovo Tech World Japan 2024」を開催した

    レノボ・ジャパンは26日、年次イベント「Lenovo Tech World Japan 2024」を開催した

AI投資を加速させるレノボ

レノボの調査によると、生成AIの全社的に積極的な活用を進めている日本企業は31%にのぼる。一部部門で活用を進めている企業の26%を合わせると、57%の企業がすでに生成AIの活用を始めているという。

レノボは数年前から、来るべきAI時代に向け「Smarter AI for All」というビジョンを掲げ、これまでに80を超える製品プラットフォームを立ち上げるとともに、世界中に4つのグローバルイノベーションセンターを開設してきた。

また2023年には、今後3年間で、AIデバイス、AIインフラ、AIソリューションへ10億米ドルを投資すると発表。これはレノボ史上最大のAI投資だ。檜山社長は「AIだけのために開発費用として投資している。レノボはグローバルAIインフラプロバイダーとして世界第3位の企業だ」と強調した。

  • レノボ・ジャパン 代表取締役社長 檜山太郎氏

    レノボ・ジャパン 代表取締役社長 檜山太郎氏

檜山社長は加えて「AI活用を積極的に推進するためには、活用フェーズに合わせた準備が必要だ」と指摘。自動運転技術がレベル1(運転支援)~レベル5(完全自動運転)まで段階分けされているのと同様に、AI技術もレベル1(限定的な作業支援)~レベル5(あらゆる領域で伴走するAGI:汎用人工知能)まで段階分けして推進していく必要があると説明した。

「あらゆる場所で誰もがAIの恩恵を届けるためには、あらゆる場所でAIが動作するワークロードが必要。サプライヤーとしての準備を重ねて、望ましいAI環境を構築していく」(檜山社長)

  • 「AI活用のフェーズを5段階に分ける必要がある」(檜山社長)

    「AI活用のフェーズを5段階に分ける必要がある」(檜山社長)

独自ローカルAI「Lenovo AI Now」のデモ披露

ユーザー向けにはPCやスマートフォンなどのデバイスで、個人に最適化されたAI活用を支援する。同社は6月、Windows PCの新カテゴリー「Copilot+ PC」対応モデルの次世代AI PC「Lenovo Yoga Slim 7x Gen 9」を発売した。

さらに「Lenovo Tech World '24」では、PC上で直接動作するAIエージェント「Lenovo AI Now(AI Now)」を発表。クラウド処理に依存しないため、ユーザーの個人知識ベース (PKB)とのリアルタイムのやり取りを可能にする。

  • PC上で直接動作するAIエージェント「Lenovo AI Now」

    PC上で直接動作するAIエージェント「Lenovo AI Now」

これにより、すべてのやり取りがデバイス上のローカルに保存されるため、データのプライバシー強化につながる。ユーザーは、AI Nowを活用することで、ドキュメント管理や会議の要約からデバイス制御やコンテンツ生成まで、さまざまなタスクを自動化および簡素化できる。

基調講演で披露されたAI Nowのデモでは、「檜山社長のLenovo Tech World Japanでのスケジュールを教えて」とAIに投げかけると、詳細なスケジュールを教えてくれた。また「レノボのAI戦略に関する資料を探して」と指示すれば、該当するローカルに保存されている資料が表示された。

  • 「檜山社長のLenovo Tech World Japanでのスケジュールを教えて」と聞くと……

    「檜山社長のLenovo Tech World Japanでのスケジュールを教えて」と聞くと……

  • 詳しいスケジュールを教えてくれた

    詳しいスケジュールを教えてくれた

檜山社長は「AIデバイスを展開していく上で一番重要なのは、ユーザーの生産性と効率を引き上げ、内部のデータを安全に保護していくことだ。AI Nowを使うことで、自分と同じ考えを持つ双子のような存在に作業を任せられるようになる」と話した。

なお、AI Nowは11月26日時点で日本語には対応しておらず、日本での展開も未定だという。

第6世代の「Neptune」、100%直接水冷を実現

一方、世界中の企業でAIの導入が進むにつれ、データセンターでは熱密度の上昇に対応する再設計が必要になっていると檜山社長は警鐘を鳴らす。生成AIのブームによってデータセンターの電力消費量は急増しており、4年で倍増するとの試算もある。「データセンターにおいては、パフォーマンスだけでなくサステナビリティとの両立が重要だ」(檜山社長)

そこでレノボは、「Lenovo Tech World '24」で第6世代の垂直式液体冷却システムである「ThinkSystem N1380 Neptune」と、Neptune水冷技術を採用する高性能サーバー「ThinkSystem SC777 V4 Neptune」を発表した。両製品は、AIやハイパフォーマンスコンピューティング (HPC) データセンター向けに設計されており、データセンター用の特殊空調なしで、100KW超のサーバーラックを運用できる。

  • レノボ独自の液体冷却テクノロジー

    レノボ独自の液体冷却テクノロジー

第6世代のNeptuneは、100%直接水冷を実現し、空冷と比較して3.5倍の冷却効率を達成し、消費電力も約4割削減できるという。

  • 第6世代のNeptune。100%直接水冷で空冷と比較して3.5倍の冷却効率を実現する

    第6世代のNeptune。100%直接水冷で空冷と比較して3.5倍の冷却効率を実現する

「我々は2012年から直接水冷の技術を磨いてきた。第6世代のNeptuneは一番効率が良く、サーバーラックに入るくらい小型化に成功している。水冷技術で新たなデータセンターへの道を切り開いていく」(檜山社長)