福岡市は10月1日~31日までの1カ月間、国境を越えて旅をしながら仕事をする「デジタルノマド」向けの誘致プログラム「Colive Fukuoka 2024」を開催している。国内外から集まった200人以上のデジタルノマドが1カ月間、福岡市を中心とした九州各地でリモートワークを行い、さまざまなコンテンツを通じて参加者同士で交流する。

  • 福岡市でリモートワークを行うデジタルノマド(提供:遊行)

    福岡市でリモートワークを行うデジタルノマド(提供:遊行)

世界中のデジタルノマドが注目する福岡市

デジタルノマド市場は急速に拡大している。米旅行情報サイトA Brother Abroad社の2022年の調査ではその数約3500万人。年収1000万円以上が多く、長期滞在による消費、経済効果は100兆円を超える。2035年には10億人になるとの予測もある。パンデミック後のリモートワークの普及や、「どこでも働ける」を実現するテクノロジーの進化といった要因が、デジタルノマド人口を増やしている。

日本でも4月にデジタルノマドを対象にした在留資格「デジタルノマドビザ」が新設され、国をあげての誘致体制が整ってきた。昨今の円安の影響もあり、外国人のデジタルノマドにとっては長期滞在しやすくなっている。

各自治体でデジタルノマドの誘致を進めているが、先進的なのが福岡市だ。スタートアップ企業の活動も盛んな同市は、全国に先駆けてデジタルノマドがもたらす経済効果に注目。2023年10月に第1回目となる「Colive Fukuoka 2023」を開催した。Colive Fukuokaは官民連携のイベントで、福岡市を拠点とする遊行が企画運営を担当している。

  • 「Colive Fukuoka 2024」について

    「Colive Fukuoka 2024」について

1カ月間で福岡の暮らしの魅力を伝えるだけでなく、「地域とのつながり」を持てる企画を60以上実施。計24の国・地域から約50人のデジタルノマドが参加し、経済効果は約2200万円にのぼり、1カ月間滞在した人の平均消費額は50万円超だった。そして第2回目となる今回のColive Fukuokaでは、200人以上のデジタルノマドが参加し、「酒造ツアー」や「屋台巡り」など多様なプログラムが実施された。

新たな試みとして10月7日には「空き家内見ツアー」も実施された。デジタルノマドが抱える課題の一つが「宿」だ。観光客と異なり、デジタルノマドは平均2~3カ月同じ場所に滞在するため、マンスリーマンションやシェアハウスの契約が必要だが、日本では外国人を受け入れない物件が大半だ。

福岡市と遊行はこの課題に着目し、アジアの交通の要である福岡市の空き家を紹介するツアーを実施した。

取材に応じた遊行 代表取締役CEOの大瀬良亮氏は「日本は外国人が月単位で滞在できる宿が不足しており、ビザも使いにくい。バリやチェンマイ、リスボンといった世界のデジタルノマド市場と比べるとまだまだ発展途上だ。今後は地域の宿泊・不動産事業者とも連携しながら、よりデジタルノマドが暮らしやすい場所を増やしていきたい」と述べた。

加えて「福岡市は周辺のアジア地域と近く、空港から都心へのアクセスもいい。ご飯もおいしく自然も豊かだ。もちろんITインフラも整っているし、何より福岡市の人たちはみんな人当たりが良い。デジタルノマド同士はもちろん、地域住民や企業とのつながりを支援していく。世界中のデジタルノマドに『福岡にはあいつがいる』と思ってもらいたい」と話した。

  • 遊行 代表取締役CEO 大瀬良亮氏

    遊行 代表取締役CEO 大瀬良亮氏

10月23~25日の3日間では、大濠公園(福岡市)敷地内にある「能楽堂」でカンファレンスが開催された。伝統ある日本らしい会場にデジタルノマドのほか、スタートアップ企業や大手IT企業、東南アジアの政府関係者などが集った。

  • 大濠公園敷地内にある「能楽堂」でカンファレンスが開催された

    大濠公園敷地内にある「能楽堂」でカンファレンスが開催された

同カンファレンスでは、福岡市市長の高島宗一郎氏が登壇し、デジタルノマドの世界的なハブを目指す福岡市の魅力を紹介。また、米TIME誌で「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた片づけコンサルタントの近藤麻理恵氏もゲストとして登壇。ミニマリストが多とされるデジタルノマドに向けて、効果的な片づけ方法「コンマリメソッド」を紹介した。

  • 福岡市市長 高島宗一郎氏

    福岡市市長 高島宗一郎氏

  • 片づけコンサルタント 近藤麻理恵氏

    片づけコンサルタント 近藤麻理恵氏

  • 福岡大学和太鼓部「鼓舞猿」によるパフォーマンスも披露された

    福岡大学和太鼓部「鼓舞猿」によるパフォーマンスも披露された

AI搭載のPCがデジタルノマドを支援

カンファレンスの基調講演には、レノボ コンシューマ事業部 営業戦略部 本部長の柳沼綾氏と、日本マイクロソフト 業務執行役員 デバイスパートナーセールス事業本部 事業本部長の佐藤久氏が登壇。AIのために設計された新カテゴリーのWindows PC「Copilot+ PC」が、デジタルノマドのワークスタイルをどのように変革するかが紹介され、多くの参加者が耳を傾けていた。

  • レノボ コンシューマ事業部 営業戦略部 本部長 柳沼綾氏

    レノボ コンシューマ事業部 営業戦略部 本部長 柳沼綾氏

  • 日本マイクロソフト 業務執行役員 デバイスパートナーセールス事業本部 事業本部長 佐藤久氏

    日本マイクロソフト 業務執行役員 デバイスパートナーセールス事業本部 事業本部長 佐藤久氏

イベント会場内には、Copilot+ PCがずらりと並べられたカフェブースもあり、多くのデジタルノマドがAI PCのさまざまな最新機能を体験していた。

  • レノボの「Copilot+ PC」がずらりと並ぶカフェブース

    レノボの「Copilot+ PC」がずらりと並ぶカフェブース

  • AI PCのさまざまな最新機能を体験していた

    AI PCのさまざまな最新機能を体験していた

筆者もCopilot+ PCに搭載されている機能「コクリエイター」を体験。コクリエイターは新しいペイントアプリに搭載されている機能で、手描きと文字によるプロンプトで画像を生成できる。

「cat(猫),gray(灰色),siberian(サイベリアン),pinknose(ピンク色の鼻)」と単語でプロンプトして適当に絵をかいてみると、かわいらしい猫の絵が瞬時に生成された。実写風や印象派風、アニメ風などのスタイルを自由に選択でき、絵心やスキルに関係なく自分のアイデアを自由に表現することができる。

  • 筆者が「コクリエイター」を使って描いた猫のイラスト。飼っているサイベリアンの猫をイメージして描いてみた

    筆者が「コクリエイター」を使って描いた猫のイラスト。飼っているサイベリアンの猫をイメージして描いてみた

デジタルノマドとCopilot+ PCの相性はいい。例えば、Copilot+ PCは高度なセキュリティ機能でプライバシーを保護するため、デジタルノマドは世界中で安心して働くことができる。また、大容量バッテリーとAIによるパフォーマンス制御で、電源が確保できない場合でも安心して作業を続けることが可能。ローカルビデオを最大22時間連続で再生できるスペックを持っている。

さらに、AIによるリアルタイム翻訳機能もあるため、日本に訪れたデジタルノマドが日本の自治体や企業と共同プロジェクトに取り組む場合も円滑なコミュニケーションが可能だ。

取材に応じたレノボの柳沼氏は「AIはデジタルノマドの働き方を変える可能性を秘めている。Copilot+ PCは業務効率化だけでなく、セキュリティの確保やワークスタイルの多様化に貢献できる」と語った。

  • レノボ コンシューマ事業部 営業戦略部 本部長 柳沼綾氏

    レノボ コンシューマ事業部 営業戦略部 本部長 柳沼綾氏