米Microsoftは11月18日、東京都内に国内で初となる研究拠点「Microsoft Research Asia Tokyo」を開設した。ロボットや自動車分野といった日本企業が得意とする技術にAIを組み合わせ、生産性向上や新規事業創出につなげる。物体を操作したり、人とコミュニケーションをとり物理的な作業を支援する「Embodied(エンボディド)AI」といった分野に焦点を当て、研究を進めていく考えだ。

  • 「Microsoft Research Asia Tokyo」開所式の様子

    「Microsoft Research Asia Tokyo」開所式の様子

AI×ロボットで「生成AIの次に来る技術を研究開発」

18日に開かれた開所式で日本マイクロソフトの津坂美樹社長は「ついに日本で研究拠点を開設できた。AI革新を中心に研究開発を進め、少子高齢化に直面する日本にブレークスルーのソリューションを提供していきたい」とあいさつした。

  • 日本マイクロソフト 代表取締役社長 津坂美樹氏

    日本マイクロソフト 代表取締役社長 津坂美樹氏

Microsoftは4月、日本国内のデータセンター建設やサイバーセキュリティー対策、AI人材の育成などに今後2年間で29億ドル(当時の為替レートで約4400億円)を投資すると発表した。今回の研究拠点新設もこの投資計画の一環だ。

川崎重工業や本田技研工業(ホンダ)、日産自動車との連携をさらに強化し、ロボットや自動車分野にAIを組み合わせて、より複雑な動きや業務をこなす技術やシステムの開発を目指す。そのほか、神経科学や福祉といった分野や、高度なAIが社会にもたらす影響に関する研究も進める。

来賓として出席したホンダの小川厚常務執行役員は「ホンダが持つ高度なハード技術・制御技術とMicrosoftのAI技術を掛け合わせることで、エンボディドAIの技術開発を加速していく。簡単な指示や説明で複雑な操作を行うロボットが実現できるだろう。生成AIの次にくる技術はエンボディドAIだと確信している」と述べた。

  • 本田技術研究所 常務執行役員 小川厚氏

    本田技術研究所 常務執行役員 小川厚氏

また同研究拠点では、教育機関への資金提供などを通じてAI人材の育成も後押しする。今後5年間で東京大学や慶應義塾大学、カーネギーメロン大学のAI研究に対し、それぞれ約15億円分のリソースを提供する考えだ。

30年以上の歴史を持つ「Microsoft Research」 拠点数を拡大へ

1991年に創設されたMicrosoft Researchは、AIや機械学習などを中心にしたコンピュータサイエンス関連の基礎および応用の研究を続けてきた。これまでの30年間で同社のサイエンティスト、エンジニアらによって、OSの「Windows」や業務ソフトウェアの「Office」、クラウド基盤の「Azure」などの製品や技術を生み出してきた。

今回の東京拠点の開設で、拠点数は9カ国13カ所に広がり、アジア太平洋地域では北京、上海、バンクーバーに次ぐ4カ所目だ。同地域では2025年にシンガポールと香港にも拠点を新設する予定だ。

  • 「Microsoft Research」の拠点数は9カ国13カ所に広がった

    「Microsoft Research」の拠点数は9カ国13カ所に広がった

Microsoft Research Asia マネージングディレクターのリドン・ジョウ氏は「業界を超えたAI研究を加速する。世界的視野を持ちながらも、その地域に根差した特徴を生かしながら、AIをより良い方向に導くブレイクスルー技術の創造を目指す」と意気込みを見せた。

  • Microsoft Research Asia マネージングディレクター リドン・ジョウ氏

    Microsoft Research Asia マネージングディレクター リドン・ジョウ氏