共和党候補のDonald Trump(ドナルド・トランプ)氏が大統領選挙を制し、次期米国大統領に就任することになった。注目の1つが、同氏を支持してきたElon Musk(イーロン・マスク)氏だ。マスク氏は第二期トランプ政権でどのような影響力を持つのだろうか?
マスク氏が政府の効率化を進める組織を率いる?
すでにマスク氏は、トランプ氏が行ったウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話会談に同席したことが報じられている。報道によると、トランプ氏は新政権で政府の効率化を進める組織(Department of Government Efficiency)を新たに設け、マスク氏が率いると言われている。
マスク氏は効率化を進めて2兆ドルの削減を実現できるとしている。その一環として、数万人規模の官僚の解雇も含まれるようだ。イノベーションを阻害するような規制の緩和や撤廃も予想されている。
一方で、Tesla(テスラ)、X、SpaceX(スペースX)、xAI、Neuralinkなど、マスク氏が率いたり企業での立場や役割は継続する、と近い情報筋は話しているとのこと。同氏はXで「政府の改革は、民間セクターのAチームが政府改革に時間を割くほど重要だ。その時がきた」とポスト。
America’s A team is usually building companies in the private sector
— Elon Musk (@elonmusk) November 7, 2024
Once in a long time, reforming government is important enough that the A team allocates time to government.
This is that time. https://t.co/Hzv0ZDup20
マスク氏の側近のコメントとして「イーロンを理解するために最も重要なこととして、(彼は)一見、無謀なリスクテイカーに見えるが、数字と確率を完全に理解したうえで行動している。働く相手としては悪夢のような相手だが、自動運転、ロケット、AI分野での統括には、優れた職員が必要なのも事実だ」と述べている。
マスク氏を支える側近たち
マスク氏と近い人物をいくつか紹介する。1人目は同氏が所有するThe Boring Companyのプレジデント、Steve Davis氏だ。マスク氏が2022年に440億ドルでTwitterを買収した際、Twitterの当時の本社に泊まり込みで詰めて「トランジション(移行)チーム」を率いた。その結果、80%の人員削減が行われた。「(Davis氏は)人を解雇することに長けている」とは、マスク氏とDavis氏の両方を知る人の弁だ。
次に紹介しているのがOmead Afshar氏。マスク氏の“火消し役”と自らを名乗っており、Teslaが米テキサス州に建てた巨大な自動車工場「Giga Texas」の建設を統括した。また、Xでの人員整理、Teslaが4月に行った1万4000人規模の人員削減にも関わったという。
Afshar氏と働いたことがあるという人によると、「一見すると意味がないように見える困難な仕事もやり遂げる。イーロンは彼(Afshar氏)が大好きだ。(Afshar氏は)執行者だ」という。
Twitter買収後のXを通じてMusk氏はTrump支持の意見を発信できるツールを得たほか、シリコンバレーとのコネクションも強化したという。
その中には、ポッドキャスト「All-In」のモデレーターを務めるJason Calacanis氏(起業家、ファンドマネージャー)とDavid Sacks氏(Sacks氏はPayPalの創業COO、Yammerの創業者であり、現在Craft Venturesのゼネラルパートナーを務める)などの名前も挙げている。ある共和党の大口献金者はSacks氏を、政権内で役割を果たすことができる「政策通」と表現しているという。
マスク氏の手法が民主主義的価値観とどのように両立していくかが注目点
マスク氏の事業については、トランプ氏がSpaceXの最新のStarshipロケットを称賛し、ロシア、中国、NASAの能力を超える技術を開発したことに触れ、火星へのミッション立ち上げ、Starlinkを構成する6000基の低軌道衛星ネットワークなど、マスク氏の目標を達成するための障壁にどのような影響があるのかなどが注目ポイントだという。
例えば、SpaceXはカリフォルニア州、フロリダ州でロケット打ち上げの承認を迅速に得るように求めているという。また、2022年にSpaceXと地方のブロードバンド提供について決裂した連邦通信委員会(FCC)についても、覆る可能性があるかもしれないとのことだ。
さらには、マスク氏がSpaceXのスタッフ2人(Terrence J. O'Shaughnessy氏とTim Hughes氏)を国防省に任命することを検討するようにトランプ氏に要請したことも紹介している。
一方、Teslaではトランプ氏をはじめとした共和党は電気自動車に対して懐疑的な姿勢であり、これへの対応が迫られると予想している。Google Waymoが自動運転レベルで最高位を得ているのに対し、Teslaはまだだ。
これが2025年にカリフォルニア州とテキサス州でロボタクシーを導入するというマスク氏の計画の障害になっているが、同氏は州レベルの自動運転ガイドラインに影響を与えようとしているという。
シリアルアントレプレナー(連続して新しい事業を立ち上げる起業家)として実績のあるマスク氏の手法が連邦政府の効率化にどのような影響を与えるのか、民主主義的価値観とどのように両立していくのかが今後の重要な注目点になるとのことだ。11月11日付のFinancial Timesが報じている。