ソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」を運営するクラダシは10月21~22日、「食のサステナビリティ共創・協働」をテーマにしたフォーラムを開催した。会場には多くのメーカー関係者や行政団体が来場した。フォーラムでは、主に企業のサスティナブルな取り組みを紹介する有力セミナーと食のサステナブルな課題に挑むスタートアップピッチコンテスト「Sustainnovation ピッチ」などを実施した。食×サスティナブルに関するイベントは国内最大級となる。2日間開催したイベントの詳細を紹介する。
10月21日は、クラダシが運営する社会貢献型インターンシップ「クラダシチャレンジ」に参加した学生による最終合同報告とピッチコンテストを開催した。実際に現地を訪れ、農作業や現地の人との意見交換を通して、地域の現状や課題を自分事として考えたZ世代の大学生による食と地方創生の未来へのアイディアを競った。
▲Z世代が食と地方創生の未来へのアイディアを競った
10月22日は、さまざまな切り口をテーマにしたセミナーを開催した。オープニング挨拶で、クラダシの関藤竜也会長は、「農林水産省と環境省の後援を経て、今回3回目となる『食のサステナビリティ共創・協働』フォーラムを開催することができた。『食のサステナビリティ共創・協働』フォーラムは、『食』x『サステナビリティ』に特化したイベントだ。世界、日本での『食』や『農』に関わるさまざまなサスティナブルな課題や、企業・マルチステークホルダーによる課題への協働事例を発信し理解を深めることを目指している。各企業や企業間・官民が連携して、課題解決に取り組んでいくムーブメントを起こし、食に関わる企業自らが創るサステナビリティ共創・協働のイベントだ。今日のプログラムは過去最大級の登壇者となり、非常に充実して面白い内容となっている。オフラインで来られている人は”同じ思い”で来ており、ぜひ隙間時間で名刺交換などをしていただき、”ネクストアクション”につながるようないい出会いが起きるといいなと思っている」と挨拶した。
<このイベントでしか聞けない内容が多数>
イベント開始から多くの来場者が訪れ、セミナーは盛り上がった。基調講演では京都先端科学大学教授 一橋大学ビジネススクール客員教授の名和高司氏が登壇し、「エシックス経営~倫理を基軸としたパーパス経営の実践~」について説明した。
その次も名和氏がモデレーターとなり、味の素執行役常務サステナビリティ・コミュニケーション担当の森島千佳氏とJapan Activation CapitalChiefSustainability Officerの磯貝友紀氏が登壇し、パネルディスカッション形式でパーパス経営の実践について紹介した。森島氏は味の素の理念などについて紹介し、磯貝氏はサスティナブルな行動をしながら財務リターンにつながることが重要であると話した。さらに磯貝氏は「サステナビリティ活動の選択と集中」が重要であるとも力説した。自社の価値創造にとって最も重要な「未来の稼ぐ力」は何か、それを生み出すサステナビリティ活動を十分に行っているか、逆に不要な活動にリソースを割いていないかを判断する必要があると説明した。
後半では、電通と兼松が登壇し、「環境配慮型食材の開発・応用・販売・普及に向けたトライ&エラー~電通のクリエイティビティ×兼松のバリューチェーン~」を紹介した。どのセミナーも有力企業の最新トレンドを学べるものとなっており、セミナー参加者はこのイベントでしか知りえない希少価値の高い内容を知ることができた。
<業界注目のスタートアップが登壇>
10月22日には、同時に「Sustainnovation ピッチ」も開催した。「Sustainnovation ピッチ」とは、「食×サステナビリティ」の領域で課題解決に挑むスタートアップ企業が、6分間で事業プランを競い合うピッチコンテストのこと。食の課題に挑戦するスタートアップを盛り上げ、課題解決に向けたイノベーションの創出を増やすべく、Future Food Fundとの共催で、起業家・企業によるピッチコンテストの開催に至った。
ピッチにはおから商品を販売するオカラテクノロジズ、米麹由来の甘味料を使用したスイーツを販売するオリゼ、養豚テックを出発点とする食料・環境問題の解決を目指すEco-Pork、未利用・遊休不動産を活用したエシカルプロテイン生産事業を展開するGOODGOOD、植物性ミルクで作るプラントベースアイス事業を行うYUMRICHが登壇した。
審査員にはFuture Food Fundの村田靖雄ファンドマネージャー、エッグフォワードの徳谷智史代表取締役社長、キリンホールディングス ヘルスサイエンス事業部 新規事業グループ の津川翔主査、セブン&アイ・ホールディングス 経営企画部の阪上かおるオフィサー、シグマクシス プリンシパルの川本拓己氏、クラダシ河村晃平代表取締役社長CEO、「日本ネット経済新聞」を発行する日本流通産業新聞社の黒田海椰が参加した。
ピッチは各企業が用意した資料をもとに事業の紹介と今後の展望などについて説明した。中には人を惹きつけるようお笑いの要素も入れて他社と差別化を図る企業もいた。企業のプレゼンテーションの後には、審査員が気になった部分を質問し、会場は盛り上がった様子を見せた。他社との違いや将来性、スケールアップの可能性などについて質問し、どの企業が最も賞に値するか見極めた。
<最優秀賞企業はEco-pork>
審査の結果、最優秀賞にはEco-Porkを選出した。
エッグフォワードの徳谷社長は、「サステナビリティや社会意義だけでなく、現場感に基づいた事業構想がすばらしいと思う。また、一つの事業者のみが良くなっていくのではなく、面で養豚事業全体を変えていく、さらにデータを用いた形で科学的な経営に進化させるというコンセプトが大変すばらしく、今後の事業成長の可能性を強く感じられた」と評価した。
Future Food Fundの村田マネージャーも、「世界中にさまざまな産業課題がある中で今の畜産問題への解決に取り組まれており、その中でフードテックの広がりを見ることができたと感じた。また、このような機会を通して、食の可能性や食の課題解決が進んでいることも実感できた」とコメントした。
▲クラダシ 河村晃平社長CEO(左)とEco-Pork 鈴木健人取締役CFO(右)
メディア賞として、「日本ネット経済新聞」はオカラテクノロジズを選出した。食べられているおからは1%、廃棄量は約100億円という課題に危機感を覚えた。また大豆は韓国をはじめアジア圏でも食べられており、企業の海外での成功も可能性が高いと捉え、今後の企業の成長も含めて選出したという。
<交流会も盛況>
全イベント終了後には、交流会も開催した。「Sustainnovation ピッチ」の登壇者と審査員、セミナーの登壇者と聴講者などが参加し、会場は大賑わいだった。
▲交流会も開催した
交流会で河村社長CEOは今回のイベント開催について、「セミナーに関しては昨年よりも多い登壇者の方に登壇していただき、そして今年は『Sustainnovation ピッチ』を初めて開催した。おもしろい企業が参加し、私自身、このような企業があるのかと新たな発見にもなった。来年もさらに参加企業を増やし、よりおもしろいピッチを開催できればと思っている」と話した。