慶應義塾大学(慶大)とS-CADE.の両者は11月7日、ジャンプ高に影響を与えないセグメントの変位を基に、スマートフォンを用いてジャンプ高を算出する手法を開発したことを共同で発表した。
同成果は、慶大 体育研究所の稲見崇孝准教授(慶大大学院 健康マネジメント研究科委員兼任)らの共同研究チームによるもの。詳細は、スポーツ生理学とパフォーマンスに関する全般を扱う学術誌「International Journal of Sports Physiology and Performance」に掲載された。
多くの陸上競技、あるいはサッカーや野球、バスケットといった球技などにおいて、走力の高さ(足の速さ)は高いパフォーマンスにつながり、コンディションの良さを示すことにもなる。近年、走力の高さとジャンプの高さには相関関係があることが研究によって明らかにされており、“足が速い人ほどより高くジャンプできる”という研究結果が発表され、数多くのスポーツ競技の現場でジャンプ高の計測が実施されている。
ジャンプ高は、走り幅跳びや棒高跳び、バスケットボール、バレーボールなど、さまざまなスポーツにおけるパフォーマンスと関連する重要な指標で、ジャンプ動作中の力積から算出する「力積法」がゴールドスタンダードとされている。一方で近年になってから、軽量マットなどのさまざまな簡易デバイスを用いて、ジャンプ動作時の滞空時間からジャンプ高を算出する方法が開発されており、これは「滞空時間法」と呼ばれている。
しかしこれまでの滞空時間法では、地面を離れる時と異なる姿勢で着地するとジャンプ高が最大10cmも過大評価されてしまうことが先行研究で指摘されていた。そこで研究チームは今回、スマートフォンアプリを用いたジャンプ高測定における従来の課題を克服するため、ジャンプ高に影響を与えないセグメントの変位を基にスマートフォンを用いてジャンプ高を算出する修正滞空時間法を提案し、その妥当性を検証したという。
修正滞空時間法の検証ではまず、24名の男性の「大転子」(股関節の外側にある大腿骨の上外方にある突起)へ、事前にマーカーを貼り付けることから実施された。その後、地面反力計の上で全力の垂直跳びを実施し、その動作をスマートフォン(今回はiPhoneが使用された)のハイスピードカメラ(240fps)で撮影。S-CADE.が開発したスマートフォンアプリ「JumpEye」にその動画をインポートした後、以下の手順にて解析が実施された。
- 対象者の足先が地面から離れる直前の大転子位置に水平線を挿入(赤色水平線)
- 落下してくるコマまで動画を進める
- 最初に挿入された水平線へ大転子が落下した時点の鉛直変位に基づいて滞空時間とジャンプ高を算出