三菱商事と出光興産が『低炭素アンモニア』の輸入を検討

三菱商事(中西勝也社長)と出光興産が、石油メジャー・米エクソンモービルのクリーン水素・アンモニア製造プロジェクトに参画するか、共同検討を始めた。

 対象となるのはエクソンモービルが米テキサス州で推進するプロジェクト。製造時に排出される二酸化炭素(CO2)の約98%を回収し、低炭素水素や低炭素アンモニアを製造するもので、29年までの生産開始を目指す。年間約90万㌧のクリーン水素、年間100万㌧以上のクリーンアンモニアと、世界最大規模の生産量を見込んでいる。  

 

出光は徳山事業所(山口県周南市)の既設インフラを活用したアンモニア輸入受け入れ拠点を設置。30年までに100万㌧超のアンモニアを燃料などとして共同で導入することを目指す。

 また三菱商事は保有する愛媛県今治市にあるLPG(液化石油ガス)ターミナルをアンモニアターミナルに一部転換することを検討。30年まで年間約100万㌧のアンモニアを、電力や運輸、化学など、様々な産業用途向けに供給しようとしている。

 両社は「両社の拠点を連携させ、海外から調達するクリーンアンモニアのサプライチェーン(供給網)構築の検討を加速する」とコメントした。

 元素記号で「NH3」と表記されるアンモニアは水素(H)を含んでおり、水素を低コストで効率良く輸送・貯蔵できる。燃焼時にCO2を排出せず、既存の輸送手段・貯蔵設備を有効活用できるため、様々な産業での低炭素化・脱炭素化への貢献が期待される所以。

 燃焼時にCO2を排出しないのは水素も同じだが、「製造方法や輸送方法の確立を考えれば、社会実装されるのは30年代以降」(エネルギー業界関係者)との見方が多い。しかし、アンモニアは肥料などに利用され、既存のインフラを活用することができるため、20年代後半の社会実装が期待される。

 

 今回のクリーンアンモニアの供給網の構築など、脱炭素社会の実現に向け、産業界の連携が今後も加速しそうだ。

今あるべき経済政策とは何か? 答える人 北畑隆生・元経済産業事務次官