アークエッジ・スペースは11月6日、2021年度より開発を進めてきた6U衛星汎用バスを採用した「AE1b(YODAKA)」、および台湾宇宙センター(TASA)との連携で開発した「ONGLAISAT(オンライサット)」の6U級小型衛星2機について、打ち上げおよび国際宇宙ステーション(ISS)への輸送が完了したことを発表した。
花巻の高校生が開発に携わった人工衛星「YODAKA」
アークエッジ・スペースは、小型衛星コンステレーションの企画・設計から量産化、そして運用までの総合的なソリューションを提供する宇宙開発企業で、さまざまな機関・企業と連携した人工衛星プロジェクトを遂行している。
今回打ち上げが完了された衛星2機のうち、YODAKAは、宇宙をテーマに岩手・花巻を盛り上げることを目的に設立されたSPACE VALUEと、宇宙産業における総合的なサービスを展開するSpace BDが共同で企画した「花巻スペースプロジェクト UP花巻」の一環として企画・開発されたもの。花巻北高等学校の生徒がミッション設定に携わり、“地球周回軌道にいるYODAKAに、地上から短歌の上の句と下の句を別々に送信し、偶然に出会った組み合わせの短歌(連歌)を作成する”というミッションが設定されている。なおYODAKAという名称は、花巻市を代表する作家の宮沢賢治が著した作品にちなんだものだという。
このプロジェクトにおいてアークエッジ・スペースは、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業である「「宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業(超小型衛星の汎用バスの開発・実証支援)/迅速かつ効率的な多種類複数機生産を実現する6U標準汎用バスとその生産・運用システムの開発・実証」の成果として開発された6U衛星汎用バスを活用し、衛星の設計・開発・製造・運用を担当。ミッション機器を搭載したYODAKAの製造・運用を通じて、同事業において開発した衛星量産システムの活用および複数衛星自動運用システムの実運用を開始するとしている。
なお同社によるとこのプロジェクトでは、花巻北高校における宇宙教育の一環として、打ち上げに先立ち同校の生徒をアークエッジ・スペース有明本社に迎え、同社の衛星事業やYODAKAの内容について説明するとともに、YODAKAに搭載される送受信機の組み立て作業に参加してもらったとのこと。同衛星は今後、先述の“宇宙短歌ミッション”に挑むとのことで、上の句(5・7・5)については一般公募が行われている最中だ(12月25日23時59分締切、応募フォームはこちら)。
TASA・東京大学とも連携し開発された「ONGLAISAT」
一方のONGLAISATは、TASAとの連携に寄り開発されたリモートセンシング衛星。正式名称は「ONboard Globe-Looking And Imaging Satellite」で、“TASAが新規開発した光学観測装置の搭載により、世界中の地球観測を行うリモートセンシング衛星”という意味合いで名付けられたという。なおONGLAI(旺來)は、台湾で縁起物とされるパイナップルを意味する。
同プロジェクトでは、衛星バスの開発・インテグレーション試験・初期運用を、東京大学(東大)大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 中須賀・船瀬・五十里研究室が担当し、ミッション機器の開発はTASAが担ったとのこと。そしてアークエッジ・スペースは東大とも連携し、ミッション部・バス部の開発に関する各種ベンダーとの契約や官辺調整、衛生試験の実施サポートなどを行ったとする。
同社によると、ONGLAISATは6Uサイズで、衛星搭載部品などに民生品を活用することで低コストかつ短期間での開発を可能にしたといい、効率的かつ高頻度な災害監視、あるいは環境モニタリングなど、幅広い分野での利用・ビジネス拡大が期待されるとしている。
2機とも無事ISSに到着 - 1か月を目途に宇宙空間に放出へ
そして両衛星は、11月5日11時29分(日本時間)に、米・フロリダ州のケネディ宇宙センターからSpaceXの「Falcon 9」ロケットに搭載されたドラゴン補給船によって打ち上げられ、ISSへの輸送が完了。同補給船の31回目の商業補給サービス「CRS-2 SpX-31」によってドッキングされ、同日23時53分ごろに無事にISSへと到着したという。
なおアークエッジ・スペースによると、2機の衛星は今後1か月程度を目途にISSから宇宙空間へと放出される予定で、その後は1か月程度の初期運用を行った後に実運用フェーズへと移行し、各種実証などを実施する予定だとしている。