宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月4日、H3ロケット4号機の打上げに成功した。種子島宇宙センター 大型ロケット発射場から15時48分に離昇した4号機は順調に飛行を続け、防衛省のXバンド防衛通信衛星「きらめき3号」を分離、所定の軌道に投入した。

  • H3ロケット4号機の打上げの様子
    出典:Xバンド防衛通信衛星「きらめき3号」/H3ロケット4号機打上げライブ中継(JAXA)

4号機ではきらめき3号を、H3ロケットとしては初となる静止トランスファー軌道へ投入。また衛星分離後には、将来のロングコーストミッションに見据えたデータ取得を行う予定だ。

静止軌道へ人工衛星を投入する場合、赤道上空の軌道に直接投入できる射場と比べると、種子島の射場は赤道からやや高い緯度にある関係で、投入軌道が赤道に対して斜めになる(28.5度の軌道傾斜角がつく)ため、打ち上げ能力の観点でやや不利となる。

これを緩和するため、H-IIAロケット高度化プロジェクトとして開発した技術では、ロケットが宇宙空間を長時間飛行した後に第2段エンジンを改めて着火し、人工衛星を静止軌道により近い軌道まで運ぶ。こうすることで、人工衛星が搭載している燃料の消費量を抑えるようにするというものだ。

H3ロケットでも同技術を適用するために必要なデータ取得を行うが、今回のミッションではきらめき3号の軌道投入までにほぼ燃料を使い切ってしまうことから、第2段エンジンの再着火は行わず、その手前の慣性飛行中のデータを取得するとのこと。地上局との通信距離が長くなるため、4号機の機体にはハイゲインアンテナを追加搭載している。

  • H-IIA(高度化仕様)による静止軌道への人工衛星投入イメージ
    出典:Xバンド防衛通信衛星「きらめき3号」/H3ロケット4号機打上げライブ中継(JAXA)

防衛省が整備するXバンド防衛通信衛星は、3機一体の衛星通信システムとして十分な能力を発揮することが求められており、これまで2017年にきらめき2号をH-IIAロケット32号機で打上げ、2018年にはきらめき1号をフランス領ギアナから打ち上げ、いずれも軌道投入に成功している。

なお、H3ロケット4号機の打上げは4回延期されており、当初は10月20日に打上げ予定だったが、H-IIAロケット49号機の打上げが天候の影響で9月26日にずれ込んだため、H3 4号機の打上げを10月26日に再設定。その後、4号機の第2段エンジンに不具合が起きたことを受けて10月30日へと延期した。さらに天候不良のため3度目の延期発表ののち、11月2日に再設定したものの、台湾を直撃した台風21号の影響で11月4日に延期されている