東京都知事選で不適切なポスターが掲示された問題を受け、公職選挙法改正に向けた与野党の協議が始まった。
今秋に見込まれる臨時国会での法改正を見据える。ただ、早期の衆院解散・総選挙の可能性も取り沙汰される中、次期衆院選までには改正が間に合わない可能性もある。
過去最多の56人が立候補した7月の都知事選では、候補者と無関係の同一ポスターが大量に張られたほか、ほぼ全裸の女性のポスターが掲示され、警視庁が都迷惑防止条例違反の疑いで警告。有権者らから都選挙管理委員会に多くの苦情が寄せられた。当選を果たした小池百合子都知事も、岸田文雄首相に公選法の見直しを要請した。
与野党は、ポスターに品位保持の規定を設けることや、営利目的の掲示を禁止し、違反した場合には罰則を科すことなどを議論。候補者名の記載を義務付ける案も出ている。自民、公明両党と、立憲民主、日本維新の会、共産、国民民主の野党4党が協議に参加している。
選挙制度を所管する松本剛明総務相は、都知事選におけるポスター問題について「選挙に関わってきた者としては、極めて危機的な状況であると感じる」と苦言。与野党の協議を注視する考えを示している。
一方、鳥取県は独自の条例制定を目指している。「選挙運動用のポスターは1枚を超えて掲示することが認められていない」ことを明示。選挙目的以外でのポスターが掲示された場合、選挙管理委員会が掲示しないよう求めたり、撤去させたりできることを盛り込む。違反者への罰則規定は設けない方針だ。9月定例議会に条例案を提出し、11月施行を目指す。
選挙運動における表現の自由を不当に侵害しないことは改めて条例で掲げるという。平井伸治知事は「公選法の中にきちんとしたルールがあるわけで、守られないことに危機感を持った」と強調。その上で、「公選法の解釈を徹底し、運用をしっかりやっていくということだ」と条例制定の狙いを説明した。