タニタと言えば、体脂肪計や体組成計の販売、個人への減量指導サービスの提供、ヘルシーさを打ち出し、栄養バランスを計算した食事を出す食堂の運営など、データとは切り離せないイメージがある。しかし、同社の前代表取締役会長である谷田大輔氏は、「データからは出てこない発想も重要」だと語る。
8月22日~23日に開催された「TECH+EXPO 2024 Summer for データ活用」に同氏が登壇。社長就任時に赤字続きだった会社を黒字転換させ世界的測定器メーカーに押し上げるまで、その独自の発想からどのような変革を行ってきたかについて語った。
秋田への移転で黒字転換
講演冒頭で谷田氏は、同社で営業職を経て社長に就任した当時、年間の売上が55億円あったが借金も35億円あり、コンサルタントから「売上の半分以上借金がある会社は潰れる」と宣告されたことがあったと明かした。そこからどう立て直すかを考えた同氏は、製造業に長けた社長経験者を招き、アドバイスをもらうことにした。そして東京の板橋にあった工場をそのまま稼働させ続けることは難しいと考え、秋田への移転を決意する。
当時約70人いた従業員のほとんどが秋田に行くことを拒否したため、その代わりに50人の新卒を新たに雇用。そして製造や塗装、プレスといった各部署の長は幹部として社長の下に集めた。この判断は、各部署から1人ずつを減らすという合理化を狙ったものだったという。これにより現場がうまく回らなくなることも考えられるが、長が組織の中に入らず、外からサポートするような体制にしたところ、1年ほどで現場が成長してうまくいくようになったそうだ。