米ボーイング社の宇宙船「スターライナー」の初の有人試験飛行が、国際宇宙ステーション(ISS)に2人の飛行士を残し、無人で地上に帰還する形で終了した。往路でトラブルが発生し、安全性への懸念が拭えないため。2人は来年2月に別の民間船で帰還する。スターライナーは来年の本格運用開始を目指しており、帰還した機体などを手掛かりに、トラブルの詳しい原因の解明を急ぐ。
スターライナーは日本時間7日午前に高度約400キロを周回するISSを離脱。約6時間かけて降下し同日午後1時1分、米西部ニューメキシコ州の砂漠にあるホワイトサンズ宇宙港に着陸した。パラシュートに加え、エアバッグを開いて陸上に帰還するのが同機の特徴だ。
米国人2人を乗せて打ち上げられたのは6月5日。7日にISSに到着後、当初は1週間係留した後、同じ2人を乗せ帰還する計画だった。ところが往路の飛行中、エンジン機構のヘリウム漏れやエンジン5基の故障が判明。このうち4基を復旧させISSに到達したものの、不具合の根本原因を解明できていない。安全性への懸念が拭えないため、米航空宇宙局(NASA)は同機を無人で帰還させることとした。ISSへの係留は、結果的に3カ月に及んだ。今後は機体の検証などを進め、トラブルの原因究明を目指す。
スターライナーによる帰還を断念した2人は予定を変更し、ISSの長期滞在に参加。来年2月、既に本格運用中の米スペースX社「クルードラゴン」9号機で帰還する。同機は米露の飛行士4人を乗せる計画だったが、この問題を受け、飛行士を米露の2人に削減して空席を用意。先月予定した打ち上げを、今月24日以降に延期している。
米国は2011年にスペースシャトルを廃止。NASAは新たな有人船の開発や運用を、スペースX社とボーイング社に委ねた。クルードラゴンは20年11月から本格運用を継続中。一方、スターライナーは困難を重ねている。19年12月に無人試験飛行に挑んだが、エンジン噴射のタイミングがずれてISSに到達できなかった。その後、バルブの固着などで再試験の延期を繰り返し、22年5月にISSに到達した。
その後は有人試験飛行の準備を進めたが、パラシュート機構の強度不足、船内の配線保護テープの可燃性の問題などが判明し時間がかかった。今回の有人試験飛行を経て、来年にも本格運用に移行する計画だが、トラブルを受け、さらに検証が求められる事態となった。
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