業績回復のキオクシア 一方、上場時期はどうなる?

キオクシアホールディングス(旧東芝メモリ、早坂伸夫社長)の業績が回復してきた。2024年4―6月期連結決算(国際会計基準)は、当期損益が698億円の黒字(前年同期は1031億円の赤字)となった。

 データの長期記憶に用いるNAND型フラッシュメモリーの需要が、データセンター(DC)向けやスマートフォン向けで伸長。為替の円安傾向も寄与した。「パソコン向けは回復が弱含んでいるが、メモリー搭載容量の増加や基本ソフト(OS)更新などに伴う買い替え需要も期待される」(キオクシア)。

 足元の堅調さを踏まえ、将来への種まきも進める。北上工場(岩手県北上市)の2つ目の製造棟の建屋が7月に完成。フラッシュメモリーの市場動向を精査しながら段階的に設備投資を行い、25年秋の稼働を見込む。

 7月19日には、日本政策投資銀行からの出資期間の延長で同行と合意したと発表。政投銀は19年に約3000億円のキオクシアの非転換社債型優先株を引き受け、24年12月末に償還期限を迎える予定だった。「キオクシアは年内の株式上場に向け、財務基盤の懸念を払拭する必要があった」(業界関係者)。

 上昇気流に乗ったようにも見えるキオクシアだが、従来、半導体市況は読みにくく、現在も多様なリスクがくすぶる。

 一例が生成AI(人工知能)市場の成長鈍化。米マイクロソフトは日本事業に2年間で約4400億円、米アマゾンウェブサービは5年間で約2兆2000億円。さらに、米オラクルは10年間で1兆2000億円以上を投じる計画を示しているが、「収益に反映されるまでには時間がかかる」(金融筋)との見方が広まり、7月後半から8月上旬にかけて米大手IT各社の株価が大幅下落する場面も目立った。DCへの投資に慎重姿勢を示す会社が増えれば、キオクシアにも影響しかねない。

 株式市場の動向も不透明だ。7月末の日銀の利上げを機に日経平均株価は乱高下した。10月上場との一部報道もあるが、11月の米大統領選など不確定要素も多く、キオクシアは上場の時機を慎重に見極めざるを得ない。外部環境に左右されにくい強固な事業体制を構築できるかが問われ続ける。

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