ドイツのロケットベンチャー「ロケット・ファクトリー・アウクスブルク(RFA)」は2024年8月19日、開発中の「RFA ONE」ロケットの燃焼試験中に事故が起きたと発表した。

ロケットエンジンから火災が発生し、燃え広がった結果、機体全体が破壊された。

同社は、今回の試験が成功すれば、数週間後にも初打ち上げに挑むとしていたが、この事故により大きな試練にぶつかった。

  • 火災が発生したRFA ONEロケット

    火災が発生したRFA ONEロケット (C) RFA

RFA(Rocket Factory Augsburg)は、2018年に設立されたドイツ企業で、小型衛星の打ち上げに特化した小型ロケットを開発している。

従業員数は約200人で、これまでに5000万ユーロ以上の投資を調達している。

同社が開発している「RFA ONE」ロケットは、全長30m、直径2.1mで、高度500kmの太陽同期軌道に1.3tの打ち上げ能力をもつ。ロケットは3段式で、第1段には液体酸素とケロシンを推進剤に使う「ヘリックス」エンジンを9基、第2段にはヘリックスを真空対応にしたヘリックス・バキューム・エンジンを1基装備する。

第3段は「レッドシフト」と名付けられた再着火可能な宇宙タグボートで、複数の衛星をそれぞれ異なる軌道に投入したり、センサーなどのペイロードを搭載した軌道上プラットフォームとして運用したりできるようになっている。

打ち上げは、英国スコットランドのシェトランド諸島に建設された、サクサヴォード・スペースポートから行われる。また、南米仏領ギアナのギアナ宇宙センターも候補地となっている。

  • RFA ONEロケットの想像図

    RFA ONEロケットの想像図 (C) RFA

そして8月19日、サクサヴォード・スペースポートにおいて、第1段の実機の地上燃焼試験が行われた。

第1段は、これまで5基のエンジンのみ同時に燃焼させる試験を行ったことはあったものの、9基すべてを燃焼させるのはこれが初めてだった。

同社では、この試験が成功すれば、数週間から数か月以内にもRFA ONEの最初の打ち上げに挑むとしていた。燃焼試験に使った機体やエンジンは、その最初の打ち上げで使うものだった。

しかし、ロケットエンジンに着火した直後、エンジンから火災が発生し、機体全体に燃え広がった。機体はやがて試験台から崩れ落ち、完全に破壊された。

事故による負傷者はいなかったという。また、すぐに安全が確保され、差し迫った危険もないとした。

24日には、事故の概要や、それまでにわかっている状況などについて発表された。

それによると、エンジンの点火は、推進剤の充填と冷却を経て、機体を加圧し、まず中央のエンジンに点火し、次に少し遅れて、エンジンを2基ずつ点火していくことになっていた。燃焼時間は、推進剤がなくなるまでの35秒間の燃焼を予定していたという。

しかし、8基のエンジンに着火するところまでは進んだものの、そのうちの1基に異常が発生したという。

事故の原因などについて、同社は「まだ分析中」としたうえで、「おそらくエンジンの酸化剤ターボ・ポンプから出火した可能性が高い」とした。また、「ヘリックスは、これまで100回以上着火していますが、酸化剤ターボ・ポンプで火災が発生したことはありません。これは初めてのことで、設計には問題なく、設計変更の必要はないと確信しています」とした。これは、製造や組立時のミス、異物混入など、主に品質管理の問題が要因と考えられていることを示唆している。

また、エンジンに異常を検知した直後には、緊急停止手順に入ったものの、火災は収まらなかったという。同社は、火災が起きたエンジンの推進薬マニホールドに大きな損傷が起き、燃料のケロシンが漏れ出した結果、火災が広がることになったとしている。また、消火システムも焼け石に水の状況だったという。

そして、スラストフレームの構造全体が損傷し、やがて機体は完全に破壊されたという。

一方で、不幸中の幸いなことに、アンビリカル・タワーを避けるように崩壊したこともあり、発射場のインフラに大きな損害はなかったという。

同社は、「発射場のインフラは問題ありません。いくつかの損傷はありましたが、主要な要素を再構築する必要はありません」としている。

この事故を受け、同社は機体と発射場の両方に改良を加えるとした。機体については、推進薬マニホールドや加圧システムなどを改良し、飛行中や発射台でのエンジンの大きな損傷に耐えられるようし、たとえターボ・ポンプが爆発するような深刻なエンジン故障が発生しても、機体全体が崩壊するのを防ぐようにするという。事故当時、工場では、2号機用の機体の製造が進んでいたが、1号機用に組み替えるとともに、こうした改良を加えるという。

発射場については、消火システムを強化するとしている。

同社は、「私たちは、実機を使った試験を行うことに重点を置き、反復的に開発を行っています。これは私たちの哲学の一部であり、このアプローチには高いリスクが伴うことは承知のうえでした。私たちの目標は、できるだけ早く通常の業務に戻ることです」とコメントしている。

「私たちが本物の“ロケット会社”になるために最も重要なのは、ペイロードを軌道に投入することです。それができないのであれば、本物のロケット会社ではありません。私たちはできる限り早く、それに挑みます」。

ベンチャーによる小型ロケット開発は世界中で活発で、ドイツに限っても、RFAのほかにも「イーザル・エアロスペース(Isar Aerospace)」や「ハイインパルス(HyImpulse)」といった企業が名を連ねている。いずれも打ち上げまでもうすぐのところに来ており、いちばん乗りをめぐって、各社がしのぎを削っている。

  • 炎が燃え広がり、崩壊するRFA ONEロケットの第1段

    炎が燃え広がり、崩壊するRFA ONEロケットの第1段 (C) RFA

参考文献

(13) XユーザーのRocket Factory Augsburgさん: 「UPDATE on our S1 test anomaly! Our first stage is gone - but we have collected a significant amount of data and film footage. After reviewing it, we want to share some insights into the technical analysis, preliminary conclusions and our next steps / X
RFA ONE | Rocket Factory Augsburg