【財務省】日経平均株価が歴史的急落 大臣が市場の動揺を牽制

金融市場の不安定化を機に鈴木俊一財務相の影響力が増している。7月末に神田眞人財務官が退任し、金融市場の安定を担う〝顔〟として相対的に存在感が高まった面もある。

 日経平均株価が過去最大の下げ幅となった8月5日夕、鈴木氏は財務省内で記者団の取材に応じ「政府として冷静に判断していくことが重要だ」と述べ、市場の動揺を牽制した。

 日本株の大幅安は米景気の減速懸念が主因だが、日銀の植田和男総裁が7月末の決定会合後の記者会見でさらなる利上げに意欲を示した〝植田ショック〟が政府の資産運用立国に水をさしたとの見方もある。

 鈴木氏は8日の閣議後会見で、株価の動向は「様々な要因が絡み、投資家が判断して買ったり売ったりして価格が決まる」との見解を示し、現時点では「具体的なことをする段階ではない」と語った。一連の鈴木氏の対応は「大臣の普段通りの話し方が国民に冷静な対応を呼びかける形になった」(財務省中堅)と好感された。

 これに先立つ7日、日銀の内田眞一副総裁が講演会で「不安定な状況で利上げすることはない」と述べ、植田氏の発言を事実上修正しており、日銀が市場との対話に苦慮する中、鈴木氏の発信は重みが増した恰好。

 ただ、9月の自民党総裁選に岸田文雄首相が出馬しないため、鈴木氏の退任は「既定路線」(閣僚経験者)。神田氏の後任の三村淳財務官は為替介入に慎重とみられており、政府内には「誰が財務相になっても、財務官から内閣官房参与に横滑りした神田氏が〝影の財務官〟になるのでは」(経済官庁幹部)との見方もある。今秋にかけて、市場の安定化を担う政府の顔ぶれにも注目が集まりそうだ。

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