NTTは8月23日、AI会社「NTT AI-CIX」を8月26日に発足することに伴い、説明会を開催した。同社の代表取締役社長を務める社家一平氏は、NTTグループにおける、新会社の位置づけについて、「中期経営計画において、AIの高度化に寄与することを掲げている。サステナブルなインフラ基盤から業務・業界を横断した連鎖型AIまでトータルで提供することを目指している」と説明した。
「連鎖型AI」とは
「連鎖型AI」とは、少し耳慣れない言葉だが、どのようなものなのだろうか。
NTTはこれまでデジタルツインの予測・最適化AIと、その連鎖技術(デジタルツインコンピューティング)に取り組んできた。こうした技術を活用し、さまざまなAIが業務・業界横断で互いに連携したものが「連鎖型AI」だ。
社家氏は、「連鎖型AI」について、「一般的ではないが、数年前から研究所で使われていた。デジタルツインコンピューティングと似た概念で、デジタルツインを業界や業務ごとに作り、それぞれにおいて予測や最適化に取り組む。これらをつなぐ活動をデジタルツインコンピューティングとしてやっていた」と説明した。
新会社は個社別AIから、業界特化型AI、さらに各業界の特化型AIを掛け合わせた連鎖型AIによって全体の自動化を図り、AIドリブン社会の実現を目指す。
「昨今、業界の垣根がなくなりつつあるが、業界横断型最適化が手薄になりつつあるので、われわれが強化する」(社家氏)
コンサルからプラットフォームサービスまで一気通貫で提供
社家氏は、新会社の特徴として、コンサルティングからAIモデル開発、プラットフォームサービスまでを一気通貫で提供することを挙げた。「データを新たに取得・活用して、AIで予測・最適化することで、可能性を提案できるのはないかと考えている」(同氏)
事業は、「AI・DX推進・新規事業プロデュース事業」「PF展開事業」の2つの柱から成る。前者は、課題抽出、PoC,サービス化開発までを提供するコンサルティング、ソリューションサービスを提供する。後者は、アルゴリズムをプラットフォームに集約し、プラットフォームサービスとして提供する。
新規事業で行ったことをSaaSのようなプラットフォームとして展開することが計画されている。
-
NTT AI-CIXの事業内容
第1弾は流通のサプライチェーンの最適化
まずは、小売・流通業界におけるサプライチェーン全体最適化に取り組む。社家氏は、「流通サプライチェーンは製造、卸売、小売にまたがるが、今は分断されているので、これを連鎖させて全体最適を実現する。まだムダなプロセスがあるので、最適化が進むことで、各業界の効率化を図ることができる」と説明した。
また、農業卸の連携も視野に入れている。農作物は、需要と供給のアンマッチにより過不足が発生している。そこで、仮想化した卸市場で需給をマッチングし、農作物を直接配送することで、トータルでの最適化を目指す。
社家氏は、「各業界にAIが導入され、AIどうしが情報を交換できるようにすることで、人手不足を解消し、効率化を実現できるのではないか」と語っていた。
新会社設立でR&Dのモヤモヤの解消を
入社以来、研究畑を歩んできた社家氏は、今回、研究所からスピンアウトして、会社としての形態をとることになった背景について、次のように語った。
「AI、データ活用の分野は、研究所が単独で開発することが難しい。というのも、課題とデータが顧客にある一方、技術力は研究所にあり、ギャップが大きな分野だからだ。客とつながりながら価値を創出しなければならないという仕組みがうまく回らないときもあり、R&Dとしてモヤモヤを抱えていた」
R&D側として、「別な形でもっと貢献できるのではないか。自ら事業化できたらいいのではないか」と考えたことから、会社を立ち上げたという。社家氏は、「新会社は技術をサービスに近づけることができる」とも語っていた。