企業による研究開発投資やイノベーション創出の促進に向けた政策の方向性を議論する経済産業省の有識者会議はこのほど、中間報告書を取りまとめた。将来的に市場拡大の可能性があるものの、技術開発の不確実性などで今後の見通しが立てにくい量子や核融合などの新領域について、国として重点支援すべきとする内容を盛り込んだ。予算や税制など具体的な措置内容を明記したロードマップ(工程表)の作成などを経済産業省に提言。実用化に向けた道筋を描き、新たな価値の創出につなげる。
報告書では、将来的にビジネス拡大につながる技術として期待される一方で、巨額の設備投資が必要となるなど民間企業単独では投資が進みにくい分野として「フロンティア領域」と設定。同領域に対して、「国が旗振り役となって社会実装につなげ、新たな価値を生み出し、国富を拡大していく必要がある」と指摘し、重点支援を求めた。
フロンティア領域の具体的な分野としては、量子や核融合に加え、次世代インターネットの概念である「Web3.0(ウェブ3)」を挙げた。量子については、コンピューターに実装することで、生成AIの普及で急拡大が見込まれる電力需要の削減に、核融合については発電への活用により国内のエネルギー自給率の向上につながるなど課題解決が期待される分野だ。ウェブ3は、ブロックチェーン技術を使った仕組みで、次世代インフラとしての利用が見込まれる。
フロンティア領域への具体的な支援の方策としては、予算や税制のほか、法律や需要創出策など具体的な措置内容を盛り込んだロードマップの策定を提言。経産省の研究開発予算に同領域を育成するための事業などに優先配分する「フロンティア推進枠」の創設も求めた。研究開発の成果に報酬を支払う懸賞金制度の導入も含めた新たな政策手法の活用も提案した。