日銀が追加利上げを実行 「金利ある世界」にさらに踏み込むも株価下落招く

国債買い入れ額の減額も

「賃上げの動きが今後も続いていくだろうという予想を持てた」と話すのは、日本銀行総裁の植田和男氏。

 日銀は2024年7月31日の金融政策決定会合で利上げを決めた。0~0.1%だった政策金利(無担保コール翌日物レート)を8月1日から0.25%に引き上げ。加えて、国債買い入れ額を月6兆円程度から、26年1~3月には月3兆円程度に減らすことも決めた。

 市場では、実質賃金のマイナスが続いていること、足元で消費が弱含んでいることなどから、これらの指数がプラスに転じたことを受けて9月頃の利上げを予想する声が多かった。

 それに対して植田氏は「消費はすごく強いわけではないが、日銀の消費に関する指数を見ても底堅い」、「景気に大きなマイナスの影響を与えるものではない」と利上げの背景を説明。

 為替の円安については、輸入物価高によって国民生活に負の影響を与えているとの見方から、9月に総裁選を控える自民党内から是正を求める声が強かった。政府も為替介入を行ってきたが効果は限定的。植田氏は今回の利上げと円安との関係について「必ずしも最大の理由ではない」と説明した。日銀の利上げにしても円安是正効果は限定的という見方は強いが、7月31日は1日で4円以上、円高に振れた。

「景況感や物価の見通しが変わっていない中での今回の利上げは、政府との一体化、円安対策なのではないか」と指摘するのは第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏。

 今後、FRB(米連邦準備制度理事会)が9月利下げという見通しもある中、その前に利上げをして先手を打ちたいという狙いもあったと見られる。だが、米経済の先行き不透明感もあいまって、ブラックマンデーを超える株価下落を招いた。

 7月31日、三菱UFJ銀行が短期プライムレートを17年半ぶりに引き上げたが、これは変動型の住宅ローン金利に影響を与える指標。不動産業界では、世帯年収1200~1500万円の世帯が、自己資金1000万円、借入7000万円で8000万円の住宅を購入する場合、0.1%の金利上昇で月々の返済額は3000円程度の上昇が見込まれるという試算がある。

 プラスマイナス両面ある中で、「金利ある世界」への踏み込みが続く。