生成AIの登場により、業務におけるAIの活用が加速している。導入や操作が比較的容易な生成AIによるチャットボットの導入が済み、AI活用の次のフェーズを検討している企業も多いだろう。

一方、企業がAIを活用するためのプラットフォームの提供、ERPなどの業務アプリケーションにおけるAIの組み込みなど、AIを活用するためのテクノロジーもそろってきている。

今回、日本オラクルが経営管理におけるAI分析に関する説明会を開催したので、同社の説明をベースに、経営管理におけるAI活用のメリットについてまとめてみたい。

サードパーティーのデータも使えるFusion Data Intelligence

他の大手ITベンダー同様、オラクルもAIの開発・製品への展開に注力している。理事 クラウド・アプリケーション統括 ソリューション戦略統括 インダストリーSE本部 部長 中山耕一郎氏は、同社のAI技術の強みについて、次のように説明した。

「当社はAIの活用に必要なインフラを網羅している。まず、高速なネットワークとGPUによる計算基盤を提供しており、時間短縮とコスト削減を実現している。また、企業がAIを活用する上で必須の技術であるRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)をOracle Database 23aiで提供している。これらの技術をアプリケーションにも組み込んで提供し、ユースケースから出てきたフィードバックをインフラに回す。これができるのはオラクルだけ」

  • 日本オラクル 理事 クラウド・アプリケーション統括 ソリューション戦略統括 インダストリーSE本部 部長 中山耕一郎氏

同社は、ビジネスアプリケーション「Oracle Fusion Cloud Application」向けの分析プラットフォームとして、「Oracle Fusion Data Intelligence」を提供している。同製品はERP、HCM、SCM、CXに関わるKPI、メトリック、ダッシュボード、レポートが構築済みで、すぐに使い出すことができるほか、AIや機械学習が組み込まれている。

中山氏は、「AI活用の次のステップはより高度なデータ活用であり、これを実現するソリューションがFusion Data Intelligence。昨年9月にリブランディングし、AIを強化する形でアップグレードした」と説明。さらに、同氏は「データ活用においては、データの収集がファーストステップとなるが、ERPを利活用することでデータが集まっているので、それを利活用するためにFusion Data Intelligenceを使ってもらう」と述べた。

  • 「Oracle Fusion Data Intelligence」の構成

  • 「Oracle Fusion Data Intelligence」で利用できるKPI、メトリック、ダッシュボード、レポート

中山氏は、Fusion Data Intelligenceの特徴の一つとして、外部のデータも取り込めることを挙げた。「会計データがすべてOracle製品に入っているとは思っていない。Fusion Data Intelligenceは外部のデータも利活用できるので、分析のジャーニーをスモールスタートで始められる。残念ながら日本の分析は発展途上であり、Fusion Data Intelligenceの活用により少しでも改善されたら」と、同氏は語った。

グループ経営のカギは経営層と現場のKPIをひもづけること

続いて、クラウド・アプリケーション統括 ソリューション戦略統括 ソリューション・エンジニアリング事業本部 ERPソリューション部 部長の大城秀暁氏が、Fusion Data Intelligenceを活用した経営管理におけるAI活用について説明した。

  • 日本オラクル クラウド・アプリケーション統括 ソリューション戦略統括 ソリューション・エンジニアリング事業本部 ERPソリューション部 部長 大城秀暁氏

大城氏は、「多くの企業から、グループ経営の実現が難しいと問い合わせをいただいているが、グループ経営管理においては、経営層が考える目標値を末端に届けることが大事」と指摘した。

例えば、経営層が考える目標値を単に10%と定めるのではなく、どの地域のどのサービスで売上を伸ばすかなどを指定し、目標を達成するためのプロセスをモニタリングする。

さらに、大城氏はグループ経営の目指すべき姿として、経営層と現場のKPIをひもづけることを挙げた。現在、経営層と現場のKPIが異なるため、現場では自分たちにひも付けてKPIを管理できない状況があり、その結果、BIも部門ごとの分析にとどまっているという。

「全体のKPIと各部門のKPIを関連づけていないと、深掘りして分析できない。そのため、最終的に事業への影響がわからない」(大城氏)

AIや機械学習により、回収リスクや期日支払を予測

では、グループ経営を成功させるために、KPIはどのように管理すればよいのか。大城氏は、Single Source of Truthのデータをベースとして、グループの状況を可視化・管理することが必要だと説明した。

オラクルが提供するソリューションとしては、「Oracle Cloud EPM」で経営管理の計画を立て、「Oracle Cloud ERP」に上がってきた実績をFusion Data Intelligenceで分析してアクションにつなげる。

上述したように、Fusion Data Intelligenceにはダッシュボードが用途に応じたダッシュボードが含まれているので、設定を行うことなくこれらダッシュボードで各種業務の状況を確認できる。具体的に使える指標が用意されているので、現場の人がすぐに使えるという。

ダッシュボードを見るだけでは、どうアクションにつなげていいかわからないユーザーもいることから、Fusion Data Intelligenceでは、アクションにつながるアラートを出す。

Oracle Fusion Data Intelligenceで実現できることとしては、以下のようなことがある。

  • 出張や経費の予算超過時にアラートを通知する
  • 売上債権と仕入債務の回転日数を1カ所で確認して、運転資本に関わる意思決定を円滑にする
  • キャッシュフローを予測してキャッシュ・イン/アウトの詳細を把握する
  • 構築済みKPIや分析を利用して、IT部門を介すことなく問い合わせに回答する

さらに、Oracle Fusion Data IntelligenceのAIや機械学習を利用したユースケースとしては、「回収リスク予測」「期日支払予測」「経費の異常検出(リリース予定)」がある。

  • 「Oracle Fusion Data Intelligence」において、回収リスクを予測する手順