人、時にはペットに対して、その人・動物の名前が実にピッタリだと思う時がある。どうやらそれは、感覚的なものではなく事実かもしれない。イスラエルの研究者が、人の名前が年齢を重ねるにつれて顔の特徴に与える影響を研究結果を発表している。

大人になると同名の人と顔の特徴の類似性が多い

この研究は、イスラエルのヘブライ大学エルサレム校、ライヒマン大学の研究者が人の顔とその人の名前の関連性を調べることを目的に、機械学習アルゴリズムを用いて実験を行った。調査結果は「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表した。

研究では大人の顔と名前のマッチングとして、子ども(8歳~12歳)と大人(18歳以上)の参加者に、大人と子どもの顔写真と名前と一致させる多肢選択テストを行った。驚くべきことに、子ども、大人の両方とも、大人の顔写真を正しい名前と一致させる能力が、偶然の確率を大きく上回ることが分かったという。

一方で、子どもの顔と名前のマッチングとして、9歳~10歳の子どもの顔写真と名前を用意したところ、大人の参加者も子どもの参加者も、マッチングはうまくいかなかった。

このことから、顔の特徴と名前が一致するのは成人期という示唆を導き出している。つまり「太郎」と名付けられた子どもは、同名の子どもと顔の特徴に類似性は少ないが、大人になると同名の人と顔の特徴の類似性が多いということになる。

その人の名前により適合していく可能性が

機械学習アルゴリズムを用いて、大規模な顔画像データを処理したところ、同じ名前を持つ大人は異なる名前を持つ大人よりも顔の特徴が似ている傾向があることが分かった。だが、子どもの顔画像では同じ名前と特徴の類似性は見られなかったという。

さらに、子どもの顔写真からデジタル処理で大人の顔に加工する実験も行ったが、デジタルで人工的に加齢した顔画像からは、実際の顔写真で見られたような名前と特徴の類似性は現れなかったと報告している。

このようなことから、研究チームは人の顔の特徴は子ども時代の後に発達し、その人の名前により適合していく可能性があるという結論を出している。

この論文を紹介したNDTVは、出生児に与えられた名前が「社会的なタグ」として、その人が成長する過程で外見に影響を与えるという可能性がある、と記している。時間の経過とともに自分の名前に関連する特徴や期待を「意識的、または無意識的に自分のアイデンティティや選択の中に取り入れる」としている。

研究チームの1人であるライヒマン大学のYonat Zwebner氏は、「社会的な構造化が存在することを実証できた」と述べている(NDTVが紹介)。「社会的な構造化は非常に強く、人の外見まで影響を与えることができる」とし、名前だけでなく、ジェンダー、民族などが人の成長過程に影響を与える可能性があるかもしれない、との見解を示している。