LegalOn Technologiesは8月1日、AI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」について、「コントラクトマネジメント」サービスをリリースしたことを発表し、説明会を開いた。新サービスにより、LegalOn Cloud上で案件の受付や契約書の作成、審査、締結後の契約書管理など、一連の業務を包括的に対応することが可能となる。
また、契約書に記載されている情報のみならず、締結に至るまでの経緯や参考資料などの関連情報を、AIによって体系的に管理可能となる。そのため、締結済みの契約書やその関連情報を確認しながら、新しい契約書の作成にも役立てられるとのことだ。
コントラクトマネジメントサービスの概要
今回LegalOn Cloud上でリリースしたコントラクトマネジメントサービスは、締結済みの契約書をアップロードするだけで、タイトルや契約締結日、契約当事者名、契約開始日、契約終了日といった契約書の情報を自動で抽出し、管理台帳を作成する。契約書の検索はもちろんのこと、自動で抽出した契約更新日の前に担当者に通知する機能も備え、契約期間の管理を支援する。また、請求書や仕様書など関連する文書も格納し、締結済み契約書にひも付けて管理可能。
コントラクトマネジメントサービスは、電子帳簿保存法のスキャナ保存および電子取引データ保存の要件にも対応し、JIIMA認証にも申請済み。開発にあたっては、SKJ総合税理事務所と共に電帳法の要件を確認しながら対応を進めたとのことだ。
LegalOn Cloudの開発を統括するCPO(Chief Product Officer)の谷口昌仁氏は、「極端なことを言えば、締結済みの契約書をLegalOn Cloudに放り込むだけで、契約書管理台帳の作成から契約期限の管理、契約内容の管理まで実現できる」と自信を持って語っていた。
リリース時から示されているように、LegalOn Cloudは一つの契約書に関連する依頼部門とのやり取りや法務部門内でのやり取り、顧問弁護士とのやり取り、修正履歴、関連する過去の契約書など、さまざまな情報をひも付けて管理可能。
締結済みの契約書と、その契約の背景や交渉の履歴は切っても切れない関係だ。LegalOn Cloudを使えば使うほど過去の事例やノウハウが蓄積され、将来の契約締結時に貢献するという。ユーザーが必要な情報を自分で探すのではなく、同サービスが情報を提示することで業務を効率化し、ユーザーがより本質的な検討や意思決定に時間を費やせるよう支援するとのことだ。
なぜ今、コントラクトマネジメントが大切なのか
法規制の複雑化や法令順守意識の高まりを背景に、企業法務の体制構築が後手となることで、経営に致命的な損失を受ける事案も増えている。そのため、企業法務の必要性が高まりつつある。しかし、特に大企業を中心に法務部門の採用難や人材不足が顕著だ。
従来の企業法務は、どのように経営に貢献するのかが求められてきた。ところが昨今では法務機能の重要性が高まり、財務や人事などと共に経営を構成する要素としての役割が求められるようになっている。
LegalOn Technologies CEOの角田望氏は「従来の企業法務は、契約書の作成やチェックといったオペレーショナルな業務が中心だった。しかしこれからは、経営の意思決定に関わる、経営戦略にひも付いた法務機能を担う必要がある」と、指摘していた。
契約書は、締結してそこで終わりではない。契約は締結することで効力を持ち、順守すべき義務や行使できる権利が発生する。そのため、契約内容や契約期間の把握が重要だ。しかし、LegalOn Technologiesが実施した調査の結果によると、2024年7月時点で契約書を紙で保管している企業は61%、PDFで保管している企業が25%だ。システムを使って保管している企業は14%。
また、締結済みの契約書を紛失した経験があると回答した人は23%、契約の更新拒絶期限に気付かず更新された経験があると回答した人は44%、契約違反をしてしまった経験があると回答した人は11%だ。コントラクトマネジメントの体制が不十分だったために、不要な契約更新や契約違反などの問題が発生している。
谷口氏は「実際に契約違反をした経験のある人が11%というのは少ないと思われるかもしれないが、契約違反は取引先からの信用を失い、場合によっては契約解除や損害賠償にまで発展する可能性がある。契約書管理の重要性を理解してもらえれば」と、コメントしていた。