【株価はどう動く?】バリュー株底上げ相場第2波始まる、年末4万7000円も視野に?

上昇第2波は「倍返しの法則」

 日本の株式市場の動きは、今回も前回予想した通りの展開となっています。

 2023年年初から、1―3月が日本の株価の大底で、日本株を〝バーゲンセール〟で買うことができる最後のチャンスだと、私は音声配信サービス「スガシタボイス」の会員の皆さんにメッセージを出してきました。

 23年3月期決算で好業績、高配当の銘柄で、脱デフレ、円安の恩恵を受けるセクターが狙い目だと見て海運、鉄鋼、商社を有望視して来ましたが、1年以上株価上昇が続きました。23年4月から24年3月まででバリュー株底上げ相場の第1ラウンドが終わりました。

 4~6月はバリュー株に調整が入りましたが、ちょうど3カ月という短期の日柄です。そうして前国会会期末の6月23日近辺を転換点として、新しい上昇相場が始まっています。

 昨年の日経平均は3万5000円の壁をなかなか抜けませんでしたが、今年は年初から、この壁を軽々と突破し、今年前半は3万5000円から4万円というゾーンで株価が動いてきました。バブルの高値、3万8915円近辺の厚い壁を、6月23日以降、6月下旬から7月相場入りにかけて突破してきました。

 今年前半の高値は、3月22日の4万1087円で、3月以降、6月23日まできっちり3カ月揉み合い、7月相場入りから上昇を始めました。7月9日には4万1580円という新高値を更新したのです。これは非常に強い動きです。

 ここから先の動きをどう見るかというと、今年前半の3万5000円買い、4万円売りというゾーンから、4万円買いの4万5000円売りというゾーンに入っていきます。おそらく、年後半の高値は4万5000円プラスマイナス1000円という水準になると見ています。

 価格の波動で言うと、短期の波動で今回の上昇を見ると、23年10月4日の3万487円の二番底から、24年3月22日の4万1087円までの上昇が短期サイクルの上昇第1波で、1万600円上げています。

 その後、4月19日に3万6733円という安値を付けた後、上昇第2波が始まりました。ここでは「倍返しの法則」といって、第1波で上げた分だけ上昇するという経験則があります。3万6733円に1万600円を足すと、およそ4万7000円です。

 今年の年末までに、株式市場の環境がよければ高値は4万7000円が視野に入ります。普通の状況ならば、前述の通り4万5000円プラスマイナス1000円という水準でしょう。

 今後はおそらく7月、8月に年後半の最初の高値を付けると見ています。その後、一旦押し目を入れて、11月の米大統領選挙を挟んで年末高に向かうという展開になるのではないかと予想しています。

 以上は相場の波動から見た読みですが、ではなぜ年後半に株価が上がるのか、材料面から見てみたいと思います。

 まず第1に、昨年4月から始まった資産インフレ相場、バリュー株の底上げの継続です。ただ、前述の通り海運、鉄鋼、商社は1年でかなり株価を上げましたから、ここからさらに上げることができるのは、来期の業績がよく、IR(投資家向け広報)に熱心で、円安・インフレの波に乗ることができる銘柄です。今後はセクター間でも差が出てくるということです。

 もう1つはバリュー株底上げ相場の中で、まだ上昇していないセクターです。第1に金融です。中でも東京海上ホールディングス(東証PRM 8766)や第一生命ホールディングス(東証PRM 8750)などの損害保険、生命保険です。

 生損保は不動産を大量に保有していることが多く、デフレ時代には重荷になっていましたが、今は資産インフレの中で上昇しています。また政策保有株式の売却を求められており、その売却資金を活用した自社株買いや増配、新規投資といった動きをしています。

 次に資源・エネルギー関連です。戦争が継続していますから、ますますインフレが進み、価格上昇が続いています。このセクターも1年間で株価を上げてきましたが海運、鉄鋼、商社ほどではありませんでした。

 出光興産(東証PRM 5019)や住友金属鉱山(東証PRM 5713)、INPEX(東証PRM 1605)といった銘柄は今後、じわじわと底上げすることが期待されます。

 さらにインバウンド(訪日外国人観光客)が伸びていますから、消費関連も有望です。三越伊勢丹ホールディングス(東証PRM 3099)や髙島屋(東証PRM 8233)の業績は大幅に改善し、すでに株価の上昇が始まっています。

 最後に防衛関連です。国際情勢を見ると、日本は今後、防衛力強化を進めざるを得ない状況です。この分野の本命は三菱重工業(東証PRM 7011)と日立製作所(東証PRM 6501)だと思います。

 もう1つ、新高値を付けた要因として、長らく低迷を続けていたグロース株の一部が上昇を始めたことが挙げられます。1つの表れが前回も解説したソフトバンクグループ(東証PRM 9984)の株価上昇です。

 バリュー株底上げ相場の第2ステージでは、セクターの中で上昇する銘柄が選別されていきます。加えて、今年1月から始まった「新NISA」の資金が各分野のトップ企業に入ってきています。新NISAでようやく、個人の資金が投資に向かい始めています。銀行にお金を預けるより、銀行の株を買った方がいいという意識の変化も進んでいます。

 ではリスクはどうかというと、日本株を取り巻くリスクは、第1に日銀がどう動くか。急速な利上げ、引き締めを行えば今の楽観シナリオは崩れます。ただ、株価は上げ潮に向かっていますから、利上げは金融・経済の正常化と受け止められる可能性もあります。第2に9月にも行われる自民党総裁選で、誰が新総裁に就くかですが、その人物を株式市場が好感するかどうかによって株価の動きが大いに左右されます。