【総務省】改正地方自治法が成立 非常時、国に指示権

大規模災害や感染症の大流行など非常事態が発生した場合に、国が自治体に必要な指示ができるようにする仕組みを盛り込んだ改正地方自治法が先の通常国会で可決、成立した。個別の法律に規定がない想定外の事態に対する国の責任を明確化。国民の安全確保に向けた迅速な対応につなげる狙いだ。一部を除き9月に施行される。

 採決では自民、公明両党と日本維新の会などが賛成。立憲民主、共産各党などは反対した。

 法改正は、2020年に大型クルーズ船で新型コロナウイルスの集団感染が発生した際、国と自治体の役割分担が明確でなかったため患者の移送を巡る調整が混乱したことが背景にある。

 また、個別法に規定がなくても「国民の生命等の保護のために特に必要があると認めるとき」には、国が自治体に指示できる特例を設けた。指示権を行使する際は、事前に国が自治体に意見の提出を求めることを努力義務とした。

 国会審議では、野党が地方分権の流れに逆行すると懸念。指示権が乱用される恐れがあるとして、指示が可能になる事態の具体例を示すよう政府に求めたが、松本剛明総務相は「現時点で具体的に想定できるものはない」と述べるにとどめた。政府は「限定的な要件、適正な手続きの下、目的達成のために必要最小限の範囲で行使される」と説明。

 衆院では、指示の内容について国会への事後報告を義務付ける修正が加えられた。

 松本氏は記者会見で、特例について「地方の自主性、自立性を維持するものとして運用をしていかなければいけない」と強調。その上で「現場の状況、地域の実情を踏まえて、地方自治体ともしっかり連絡を取り合い、国と地方が手を携え、国民の生命の保護に全力を挙げる」と理解を求めた。

 全国知事会の村井嘉浩会長(宮城県知事)は、「地方自治の本旨に反し安易に行使されることがないよう、制度運用することを強く求める」と指摘した。

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