富士通は7月25日、2024年度第1四半期の決算を発表し説明会を開いた。連結合計の売上収益は前年比3.8%増となる8300憶円で、サービス、ハードウェア、デバイスの各ソリューションで増収となった。また、調整後営業利益は前年比210憶円増の236憶円となった。

  • セグメント別の第1四半期決算概況

    富士通セグメント別の第1四半期決算概況

サービスソリューションは国内が堅調

事業別に見ると、主力となるサービスソリューションは昨年からの増収増益基調が継続しているという。第1四半期の売上収益は5016憶円で前年同期比7.8%増。特に、国内ビジネスはDX(デジタルトランスフォーメーション)やモダナイゼーションの需要が大きく、11%の増収となった。調整後営業利益は前年比140憶円増となる349憶円。

調整後営業利益の変動内訳を見ると、2023年度第1四半期の209憶円に対し、増収効果による142憶円の増益に加えて、採算性の改善により81憶円の増益。開発プロセスの標準化など生産性改善への取り組みを継続した効果が表れているという。一方、Fujitsu Uvanceのオファリング開発をはじめとする事業成長投資の拡大によって、83憶円の減益。これらを統合すると、349憶円の調整後営業利益となる。

  • サービスソリューションの変動内訳

    サービスソリューションの変動内訳

特に堅調な成長を見せる国内ビジネスだが、受注は前年比で97%だ。その内訳を見ると、エンタープライズ向けビジネスの受注は前年比106%。DXやSX(サステナビリティトランスフォーメーション)、基幹システムのモダナイゼーションが拡大した。

ファイナンスビジネスは前年比100%。金融機関向けの基幹業務システムに関する大型商談を獲得できたそうだ。パブリック&ヘルスケア領域は、前年度に複数年にわたる大型案件を受注した反動などを受け、前年比で85%となった。ミッションクリティカル領域は基幹システム更改などの案件受注により、前年比で131%の伸長を見せた。

  • 領域別での国内の受注状況

    領域別での国内の受注状況

代表取締役副社長 CFOの磯部武司氏は「2024年度は順調なスタートを切ることができた。第1四半期は昨年の大型案件の影響なども見られるが、第2四半期以降に受注予定のパイプラインも拡大できているので、年間を通して堅調な動きが続く見込み」だと説明した。

  • 富士通 代表取締役副社長 CFO 磯部武司氏

    富士通 代表取締役副社長 CFO 磯部武司氏

Fujitsu Uvanceは目標を上回る推移

続けて、同社が事業成長とポートフォリオ変革の重要施策に位置付けるFujitsu Uvanceの状況について紹介された。同事業は前年比で50%増となる1092憶円の受注と、大きな伸長となった。売上は前年比37%増の965憶円。サービスソリューション全体に占めるFujitsu Uvanceの売上構成比は、2023年度の15%から2024年度は19%まで拡大した。

同社は中期経営計画において、2024年度全体でFujitsu Uvanceの売上目標を4500憶円としているが、第1四半期の進捗を振り返ると受注・売上は共に計画値を上回る状況とのことだ。ちなみに、中期経営計画の最終年度である2025年度の目標として、7000憶円の売上と30%の売上構成比を定めている。

  • Fujitsu Uvanceの推移

    Fujitsu Uvanceの推移

ハードウェアソリューションは為替の影響で増収

ハードウェアソリューションの売上収益は前年比116憶円増の2285憶円となった一方で、調整後営業利益は前年比63憶円減のマイナス36憶円だ。システムプロダクトは為替変動の影響により増収となったが、円安が部材調達費のコスト増に響いた。こうした為替の影響はネットワークプロダクトでもおおむね同様に作用するとしている。

「ネットワークプロダクトの需要は、国内も海外も前年に引き続き低い水準が続く見込み。次の成長サイクルに向けた開発投資は継続しており、損益で見ると厳しい状況が続く」(磯部氏)

デバイスソリューションも為替の影響で好転

デバイスソリューションの売上収益は、前年比で42憶円増の716憶円。調整後営業利益は前年比47憶円増の70憶円。輸出を伴うデバイスソリューション事業は為替変動の影響が利益面でプラスに作用した。しかし、磯部氏は「為替の影響を除けば、デバイスソリューションの需要は下げ止まった状況であり、需要回復の傾向は見られ始めているものの強い上昇トレンドとなるのは下期以降」と厳しい見方を示した。

同社は経営基盤強化に関する投資として、グローバル規模でERPの再構築に向けた通称「One Fujitsuプロジェクト」を進める。2024年度には国内ビジネスにおいて稼働開始を予定している。自社のDXを加速しデータドリブン経営を進めることで、事業のさらなる効率化を目指す。

目標達成に向けて順調な滑り出し

磯部氏は第1四半期の業績を振り返り、以下のようにコメントした。

「第1四半期は社内計画を若干上回り、目標達成に向けて順調な滑り出しができたと考えている。一方でこの結果はまだまだ端緒であり、一層アクセルを踏まなければいけないポイント、お客様に価値をお届けするためのポイントがある。その中心は人になるだろう。事業ポートフォリオの変化に対応して、内部リソースのリスキルや外部人材の確保、ものづくりの標準化も含めた適所適材への配置や入れ替えについて、スピード感を持った対応が重要となる。同時に、処遇の面でもしっかりとした打ち手が必要だと考えている」

「従来型のSIプロジェクトをデリバリーしながらも、Fujitsu Uvance、モダナイゼーション、コンサルティングを柱としてビジネス全体を成長させながら、生産性向上にも着実につなげる。引き続き、ビジネス拡大と採算性改善の両輪によって確実な目標達成を図り、持続的な企業価値の向上に向けて取り組んでいく」