Dropbox Japanは7月23日、日本国内の1,200人のナレッジワーカー(デジタルツール使った仕事を主に行う専門家、研究者、教育者、アナリスト、ITスタッフなど)を対象に3月に実施した「ナレッジワーカーのAI利活用に関する実態調査」の結果を公表した。

  • ナレッジワーカーの業務におけるAI利用の現状(出典:Dropbox Japan)

    ナレッジワーカーの業務におけるAI利用の現状(出典:Dropbox Japan)

調査では「AIを業務で取り入れたい」と回答した人が83.4%に上った一方で、AIを業務で利用したことがある人は21.6%にとどまり、業務でAIを利用できていない現状が明らかになった。

AIの業務利用に期待する理由は「労働生産性が上がると思うから」(83.5%)が最多で、次いで「業務量の改善が期待できるから」(81.7%)。また、仕事における「モチベーション向上」(67%)や「成長機会の獲得」(65%)といった回答も多く、自身の仕事でのパフォーマンス向上への期待も見られた。

  • 上:AIの業務利用を期待する理由/下:AIの業務利用に期待する理由(出典:Dropbox Japan)

    上:AIの業務利用を期待する理由/下:AIの業務利用に期待する理由(出典:Dropbox Japan)

特に中間管理職の間でAIの業務利用に対する期待が強く、その割合は平均よりも5ポイント高い88.9%。その理由として「労働生産性の向上」が最多で、他の役職と比較して「現行のオペレーションを変えたいから」「稼働している時間を気にせず依頼できるから」という理由が顕著に挙げられた。中間管理職はAIの活用によって業務時間や負荷に制約されずに業務をサポートし、労働生産性の向上を期待していることがわかる。

中間管理職がAIへの期待が高い理由として、業務状況が大きく関係している傾向がみられた。中間管理職がAIに任せたい仕事として最も多かったのは「単純作業」で、他の役職と比較しても最も高い割合となった。また、会議関連の仕事や議事録のまとめなど自身の業務にAIを取り入れられそうなシーンに対する回答も中間管理職が最も多く、51.8%と平均よりも10ポイント以上高かった。

  • AIに任せたい仕事(出典:Dropbox Japan)

    AIに任せたい仕事(出典:Dropbox Japan)

中間管理職が行いたい業務として最も多かったのは「マネジメント業務」、次いで「経営方針・戦略の検討・立案」「クリエイティブ業務」となり、中間管理職が本来の仕事に十分な時間を割けていない現状が明らかになった。中間管理職が本来の仕事を十分にできていないことから、「付加価値のない業務に追われている」「戦略立案やマネジメントにもっと時間を使いたいが、連絡や作業に追われている」といった状況にあると見られる。

AIの業務への導入が進まない原因として、「環境整備が整っていない」「経営者層を中心としたAIへの理解不足からくる導入効果の過小評価」「経営者層のDX化の遅れとAI導入への消極性の影響」の3つを挙げた。

  • AIを業務利用したいと思わない最大の理由(出典:Dropbox Japan)

    AIを業務利用したいと思わない最大の理由(出典:Dropbox Japan)

実際にAI導入には至っていない理由は「勤め先で推奨していない、ルールが決まっていないから」が最多で、勤め先で推奨されていないツールを使用することは非常に難しく、業務利用のボトルネックになっていることがわかった。

また、経営者層を含む役職の間ではAIの導入効果を過小評価する傾向が見られ、AIに関する情報が不十分であることのほか、セキュリティへの不安や資金不足などの理由も多く挙がった。AIに関して知識不足のためリスクやコストに意識が向かい、AIの効果を過小評価している可能性がある。

  • 上:データ発見などの情報検索にAIを取り入れられると思う人/下:データ発見などの情報検索にAIを取り入れられると思う人

    上:データ発見などの情報検索にAIを取り入れられると思う人/下:データ発見などの情報検索にAIを取り入れられると思う人

経営者層とそれ以外の役職の間にはAIの業務導入に対する期待に差がみられ、特に魅力的だと感じる点には乖離が見られた。データ発見や情報検索などにAIを取り入れることに賛成した割合は平均で48%。経営者層は特に利用するITツール数が少なく、コラボレーションにおけるストレスや不満を感じにくいことも明らかになった。他の人と協業するツールを全く利用しない人は、経営者層で35%と全役職の中で最も高く、中間管理職と2倍以上の差があった。経営者層にとってはAIツール導入による労働生産性の向上などの利点は実感しづらい可能性がある。

  • 情報管理に使用するツール(出典:Dropbox Japan)

    情報管理に使用するツール(出典:Dropbox Japan)

情報管理のツールについて尋ねると、経営者層が他の役職と比べて多かった回答が「紙に印刷したデータや手書きメモ、付せんなど」や「USBやSD カード、CD-Rなどの記録媒体」であった。これらは平均値と比べて大きな差があり、経営者層の業務におけるDX化が進んでいないことが浮き彫りになった。AIの機能を業務で活用し恩恵を受けるためには、まず業務のDXが必要で、特に経営者層のDX化支援がAI導入において重要であると同社は指摘した。