三井不動産は7月11日、2024年4月に公表した新グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」のもとで、今後のロジスティクス事業における新事業戦略を策定したことを発表した。また、国内で新規に8物件の開発を決定し、累計総投資額は約1兆2000億円に拡大する。
同社は、広場や地域の防災拠点の設置や、ドローンの実証実験フィールドの併設など、街の暮らしを豊かにする「街づくり型物流施設」の開発を推進推進するほか、DX(デジタルトランスフォーメーション)による物流の自動化や、独自の物流ソリューションの提供により、荷主企業のサプライチェーン改革を支援するという。
ロジスティクス事業のさらなる成長
新事業戦略において、同社はロジスティクス事業のさらなる成長を目指す。地域一体型の豊かな街づくりに貢献するため、地域に開かれた広場や保育所を併設した「MFLP船橋」のほか、職業訓練施設も入居する複合用途の「MFIP羽田」など、街づくり型物流施設の開発を推進。
2024年9月末には新たなフラッグシップ施設として、日鉄興和不動産との共同事業により都内最大規模となる物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」が竣工する。この施設は災害時には地域住民約1000人の緊急一時退避場所となり、敷地内に併設する高台広場は緊急着陸用のヘリポートとしても使用可能だ。
さらに、ドローン飛行用のフィールドと賃貸用R&D区画を整備し、板橋区内における災害時に備えてドローンによる物資配送や災害支援活動の実証実験などを実施予定だという。また、労働力不足に対応するため、施設従業員やトラックドライバーを対象に実施した満足度調査の結果を施設計画や管理、運営に反映する。
事業領域を拡大
また、同社は多様化するニーズに対応して事業領域を拡大し、多角化する。MFLPでは初となる全館冷凍・冷蔵倉庫として、「MFLP船橋南海神」(千葉県 船橋市)と「(仮称)MFLP杉戸」(埼玉県 杉戸町)の2物件の開発が決定した。
さらに、生成AIや5Gの普及によるさらなる需要の高まりを捉え、データセンター事業を強化。既存の3施設に加え、新たに「日野DC計画」と「相模原DC計画」の開発が決定している。都心型データセンターやコロケーション型データセンターにも事業領域を拡大するなど、積極的にデータセンター事業を強化するとのことだ。
加えて、2025年秋ころには三井不動産グループの事業提案制度「MAG!C」から生まれたグルメプラットフォーム「mitaseru(ミタセル)」の製造拠点を「MFLP船橋」内に新設予定。工場やインフラストラクチャーにも事業領域を拡大し、商品製造工場から保管、配送まで一気通貫した独自のサプライチェーンを構築する方針だ。
先駆的な環境配慮の取り組みを推進
同社は太陽光発電設備の設置を推進し、オンサイトによるグリーン電力の供給やテナントの要望に応じた専有部への「グリーン電力提供サービス」といった、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進する。
2023年10月には三井不動産と三井不動産ロジスティクスパーク投資法人が保有する全施設の共用部供給電力の100%グリーン化を達成した。また、新築および既存の全物件において、「DBJ Green Building認証」、各種「ZEB認証」または「arc」いずれかの外部認証を取得している。
2024年度中の着工を予定している「MFIP海老名」では、三井不動産グループが北海道に保有する森林約5000ヘクタールの木材を構造材および内装・仕上げ材に使用し、「植える→育てる→使う」のサイクルを回すことで持続可能な森林経営による終わらない森作りにも貢献する。