NECは7月10日、メディア・ITアナリスト向けに、社内DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速する「NEC Workstyle Innovation」に関する説明会兼オフィスツアーを実施した。
NECは今回の説明会で、社員のエンゲージメント向上とデータドリブン経営のさらなる加速に向けて、デジタルIDや生体認証、生成AIなどの先進テクノロジーを活用した働き方DXに関わる取り組みを強化することを発表した。
次世代の社員証「デジタル社員証」
同社は、自社を0番目の顧客として活きた経験や価値を提供する「クライアントゼロ」の概念のもと社内DXを実践するとともに、社内に蓄積されたDXナレッジを顧客や社会に還元・循環させることを目指している。
今回の取り組みにおいても、まずは7月からNEC本社ビルにて国内のNEC社員2万人を対象に、デジタル社員証や顔認証技術による社員向けサービスを本格稼働する。
デジタル社員証は、マイクロソフトが提供する分散型ID技術とNECの生体認証技術を組み合わせた次世代の社員証として、社員の日々の体験、働き方を大きく変えることが期待されるもの。
同ツールを活用することで、従来のプラスチックカードの社員証を持たずとも、顔認証で勤務管理システムと連携した本社ビルの入退場や売店などでの購買決済、オフィスでの複合機やロッカーなどのさまざまなサービスが利用可能となる。
また社員証だけでなく、名刺などに関してもデジタル化を進める方針で、デジタルIDを中核に人とサービス、データをつなぎ、社員の働き方の変革を進めたい構えだ。
情報の連携で障がいを持つ社員にも働きやすい環境を作る
今後、デジタル社員証と連携したさまざまな社員向けサービスを他の事業拠点にも順次展開し、社員向けスマートフォン専用アプリも継続的に拡充していく予定だという。
さらに、社外サービスとの連携を強化していくことも発表しており、その第1弾として、障がい者が活用するデジタル障害者手帳アプリである「ミライロID」との連携を開始する予定であることを発表した。
同取り組みは、NECの顔認証技術によって、社員情報とミライロIDの障がい者手帳情報を紐づけることで、障がいのある社員と共に魅力ある働く環境を提供するもの。
当日のデモンストレーションでは、車椅子を活用している社員がデジタルIDと連携したミライロIDを食堂を使用するデモンストレーションが行われた。
具体的には「顔写真登録でデジタルIDとミライロIDを連携」「サポート内容を登録してサポーターと連携する」「顔認証決済による障がい者割引」という3点の実演が行われた。
NECはこのような取り組みを通じて、国籍・年齢・性別・障がいの有無に関わらず、誰もが働きがいを感じられる環境を整えていきたい構えとしている。
経営層から一般社員まで同じデータに触れる
また、NECは今回の説明会で「経営層から社員まで同じデータを活用し、経営とマネジメントを高度化」「あらゆる業務にAIを浸透させ、生産性の向上」という点に関しても強化を進めていくことを発表した。
「経営層から社員まで同じデータを活用し、経営とマネジメントを高度化」の項目において、NECは全社のプロセスとデータを標準化した上で、「財務」「人事」「IT」などの10領域92種類にわたる経営情報を「経営ダッシュボード」として可視化し、経営層から一般社員までの全社員が同じデータに触れ、ファクトに向きあい、分析・経営判断・意思決定などのアクションの実行につなげている。
経営層にとっては「報告を待たず、自ら状況を把握し課題を特定」「スピーディな指示が出せる」という迅速な意思決定に役立てることができ、同じデータを共有することで報告書類を減らすことができるというメリットもあげられている。
「あらゆる業務にAIを浸透させ、圧倒的な生産性の向上」という項目に関して、NECは、2023年5月からNECグループ内で安全安心に使える生成AIサービスの提供を開始している。
NEC開発の生成AI「cotomi」だけでなくグローバルパートナーの生成AIも組み合わせて、延べ4万5000人が日々積極的に活用しているという。また、営業支援システムなど社内167のシステムとも連携しており、継続してシステム連携や機能の拡充を進めているのも特徴だ。
加えて、NECグループでのAIカルチャーの醸成を加速するため、社員が作成したアプリやプロンプトなどのアイデアや活用ノウハウを共有するポータルや、優れた活用事例の表彰イベントなども行っているという。
NECは、今後も社員のパフォーマンスと生産性向上に向けて、先進テクノロジーを通じて社員がより快適に生き生きと働ける全社エクスペリエンス変革に取り組んでいくとしている。また、クライアントゼロの発想のもとで蓄積した実績・ノウハウを活かし、価値創造モデル「BluStellar」として顧客向けに順次提供していきたい構え。