eBay Japan(イーベイ・ジャパン)が運営する「Qoo10」は、化粧品(コスメ)に強いECモールとして知られている。Z世代と呼ばれる若年層の顧客に、韓国コスメや国内コスメがそろう売り場として認知されている。お得さが魅力の「Qoo10」だが、今後は価格訴求だけではなく、ブランドの魅力を発信できる売り場に進化していく方針だという。「Qoo10」のコスメ領域の現状や戦略について、Beauty&Food 営業本部 部長 米川由満氏に聞いた。
――コスメECの中には、商品取扱高が100億円を超え、コスメECで最大手クラスに成長している企業がある。「Qoo10」はコスメに特化したモールではないが、流通規模や特徴は、他のコスメECプラットフォームと比べるとどうなのか?
ファッションECや百貨店が運営しているコスメECなど、さまざまなサービスがあると思うが、「Qoo10」も含めた、それぞれの売り場の特徴は異なっていると思う。「Qoo10」はブランドの公式ショップもあれば、リセラーと呼ばれるショップも出店している。価格訴求をする商品群と、ブランドの魅力を伝える商品群とがある。
最近の若い世代の購買行動が変化しており、SNSで商品と出会うケースが増えている。「Qoo10」はZ世代と呼ばれる若年層の顧客を多く抱えており、SNSとの親和性の高さも特徴だ。
単純な流通額でいえば、コスメECに強いモールとしては、最大規模に成長していると思う。
――SNSとの親和性の高さの裏付けは?
若いユーザーがSNSでコスメを見つけて、探しに来る場所として「Qoo10」が選ばれている。
前々回の大型セール「メガ割」で、ノーマークだった商品が期間中に1億円弱ぐらい売れた。「なぜ売れたのか」がなかなか分からなかった。テレビで取り上げられたわけでもなかった。
販売した店舗に尋ねてみると、「メガ割」期間中にSNSのアフィリエイト施策を実施していたという。この施策では、自社ECサイトで購入されると、投稿した方に報酬が入る仕組みだったが、自社サイトではなく、「Qoo10」に注文が集中していたことが分かった。
このことからもSNSとの親和性の高さに確証を得ることができた。
――「Qoo10」の顧客層は他のモールとは異なるのか?
国内の150社くらいのメーカーさまにアンケートを取らせていただいた。「Qoo10」で販売するきっかけは、「購入層が他のモールとは違うと思った」という声が多かった。実際に販売を開始してみると、「他のモールの購入者との重複が少なく、新規の顧客が多い」と言う。今までネットで購入したことがなかった若い層の顧客が「Qoo10」にいる。
――「Qoo10」は韓国コスメの品ぞろえが充実しているが、他のモールでも韓国コスメの取り扱いを強化している。韓国コスメでの差別化はできているのか?
韓国コスメは今では定番化しており、以前は「Qoo10」でしか買えなかったブランドもさまざまな場所で買えるようになってきた。
そんな中で昨年から、「Qoo10」でしか買えない商品を「Qoo10 ONLY」というタグを付けて販売に注力している。韓国コスメの販売店さまも「Qoo10 ONLY」を積極的にご活用いただいており、その効果が出ている。
消費者にとっても分かりやすく、「Qoo10」としても露出を高めたりしているので、販売店さまにとっても有効に使える施策だと思う。
――国内ブランドの出店も増えていると思うが、その状況は?
店舗数でいうと国内ブランドの公式ショップの方が、韓国コスメよりも多い。ただ、誰もが知っているようなブランドの出店はまだまだ少ない。
コンシューマープロダクツと呼ばれるドラッグストアなどで販売されているブランドは数多くご出店いただいている。制度品と呼ばれるカテゴリーのブランドからも関心は持っていただいて、その一部が販売を始める予定だ。ハイエンドのラグジュアリーブランドも興味は持っていただいているが、まだ販売には至っていない。段階的にブランドの取り扱いを広げている。
――ブランドの公式ショップの見せ方などを変えていく計画は?
今度、ブランドの公式ショップとそれ以外のショップをどうすみ分けしていくべきかを考えている。価格訴求していく部分と、ブランドを打ち出す部分をどうプロモーションしていくのがいいのかを検討している段階だ。
国内メーカーさまから、さまざまな声を聞き、「Qoo10」に足りないところや、今後の「Qoo10」に期待することなどを踏まえて、どう反映していくかを考えていく。
――ライブショッピングなど新しい売り方にも積極的だが、そこへの期待は?
ライブショッピングへのお問い合わせは多くいただいている。特に韓国コスメはインフルエンサーとの相性も良いので、積極的に活用しようとしているショップが多い。
「メガ割」期間中には、ライブショッピングで1億円売れるケースもある。当社としても「ライブショッピング」の専用スタジオを開設するなど、積極的に取り組んでいる。
――7月13・14日には東京ビッグサイトで初のビューティに特化したオフラインイベント「MEGA COSME LAND 2024(メガ コスメ ランド)」を開催する。このイベントへの注目度は?
「MEGA COSME LAND 2024」は各ブランドにブースを出していただき、オフラインで「Qoo10」を体験してもらうというイベントだ。ライブショッピングやルーレットでクーポンをもらえるサービスなど、オンラインで提供している施策をオフラインでも体験できる。
ブランドさまからも、商品を体験したお客さまの反応を生で見られる機会は貴重だと思っていただけているようだ。注目のブランドが集まるため、コスメ好きの新たな顧客との接点にもつながると期待していただいている。
「ライブショッピング」スタジオでもオフラインイベントを実施することがあり、「メガ割」期間中に1500人くらいのインフルエンサーや一般のお客さまが来場している。コスメを実際体験したり、その様子を配信したりする姿を見ている。「MEGA COSME LAND 2024」では、さらに著名なタレントやモデル、インフルエンサーのライブショッピングを会場から配信する予定もあり、来場者さまに喜んでいただけるだろう。
――今後、コスメ領域で強化していくことは?
モール全体の品質を上げるためにも、ブランドの公式ショップの強化が必要だと考えている。価格訴求もある程度は必要だと思うが、ブランドさまからするとストーリーやその魅力を前面に出したいと考えていると思うので、そういった部分の見せ方の工夫が必要だと考えている。
幅広い顧客層に向けた品ぞろえも強化したい。現在は若い女性の顧客に向けた商品が多いというイメージが強いと思うが、そこも維持しつつ、「Qoo10」に来たら化粧品が全部あるというイメージにしていきたい。もっと年配の方や男性も含めて幅広い顧客に向けた商品をそろえたい。