"笑う門には福来る"などと言われるが、キリンホールディングスや吉本興業などが2021年に発表した調査でも健康上の効果が検証されている。接客においても"笑顔"が重要な要素となることは容易に想像できる。イオンリテールは7月1日、「イオン」「イオンスタイル」の約240店舗で、従業員の接客・笑顔トレーニングにInstaVR社のエッジAI端末「スマイルくん」を導入したことを発表した。同社によれば、世界初の試みとなるという。

450以上にのぼる顔の表情の特徴や声量、滑舌を判定、笑顔を解析する「スマイルくん」

今回、同社が導入するInstaVR社が開発する「スマイルくん」は、AIが450以上にのぼる顔の表情の特徴や声量、滑舌、音程などを解析し、スコアリングすることで、挨拶・笑顔などの評価・改善を促すソリューション。エッジAI技術により端末内で稼動する。

笑顔のスコアリングは「口角」「イの口」「目元」などのポイントを100段階で表示、リアルタイムで確認可能となるほか、レベリングや難易度などゲーム的要素も盛り込まれており、ゲーム感覚で従業員に笑顔の改善を促すことができる。利用データをデータベースに蓄積し、システムでの一元管理に対応、データを元にレベル上位者の表彰等を行うことでモチベーション向上に利用することも可能だ。

  • 「スマイルくん」利用イメージ(同社資料より)

    「スマイルくん」利用イメージ(同社資料より)

3カ月で従業員の笑顔と挨拶の実施率が1.6倍に

イオンリテールでは、個々の従業員によるばらつきが多い接客態度の標準化と接客能力の向上を目的に「スマイルくん」を導入、2023年7月より8店舗約3,400名を対象に実証実験を行った。3カ月間の店頭で笑顔と挨拶のミステリーショッパー調査(覆面調査員によるサービスの品質・売場調査)を実施し、「スマイルくん」導入後の笑顔・発声の変化を検証したところ、笑顔と挨拶の実施率が導入前比で約1.6倍に向上したことが判明した。同社はこの結果を受けて、新入社員配属店を中心に240店舗で接客トレーニングツールとしてシステムの導入を行うことを発表している。

「スマイルくん」を開発したInstaVR社は2015年創業、VR技術やエッジAI技術の開発とサービスを展開するスタートアップ企業で経済産業省認定のJ-Startup企業にも選定。代表的なサービスとして世界140カ国、50,000社が利用するVRプラットフォーム「InstaVR」を提供している。